小説むすび | 著者 : 白水紀子

著者 : 白水紀子

真の人間になる(上)真の人間になる(上)

出版社

白水社

発売日

2023年8月8日 発売

ジャンル

1945年9月、日本人も犠牲となった「三叉山事件」をモチーフに、ブヌン族の少年ハルムトの成長を描いた感動の大作。17年かけて執筆し、台湾・中華圏の文学賞を制覇した注目作、ついに日本上陸! 上巻では、終戦前後の混乱した状況下で「三叉山事件」が起こるまでが描かれる。 台湾原住民族のブヌン族の少年・ハルムトとハイヌナンは、子供のころから野球が好きで、アミ族のコーチ、サウマが率いる野球チームに入る。1941年春、霧鹿部落を離れ、花蓮港中学に進学した二人は甲子園出場を目指して練習に励む日々を送る。だが真珠湾攻撃が起こり、野球どころではなくなってしまう。 ハルムトは、日本人が営む料理屋で働きながら学校に行くことになり、学校や仕事場で日本人、漢人、他の原住民族の学生たちと接する中で、ブヌン族としての自覚を強くし、ハイヌナンに友情以上の思いを抱くようになる……。 下巻は「三叉山事件」が実際に起こってからの出来事が中心に描かれる。 第二次世界大戦が終結して間もない1945年9月10日、米軍の輸送機が捕虜を乗せて沖縄からフィリピンのマニラへ向かっていた。台湾上空を飛行中、台風に襲われ、台東に位置する三叉山の付近に墜落。この霧鹿部落出身で山に詳しいハルムトは、駐在所の城戸所長から捜索を頼まれるが、行く気持ちになれずにいた。悩んだ末、ハルムトは捜索隊に加わり、山の中に入っていく。そして負傷したアメリカ兵のトーマスを偶然発見するが……。 ブヌン族の歴史を背負いながら、日本統治下の多民族多言語の世界で青春時代を過ごしたハルムトは、戦争による心の傷を抱えながら、多くの人たちの影響を受けて成長していく。終戦前後の台湾社会を原住民の視点から描いた作品の中で、これほど日本人との関わりを細やかに書き込んだものは他にない。三叉山事件で犠牲になった城戸八十八は「城戸所長」として本書に実名で登場している。 台湾の美しい自然を背景に、その土地で生きてきた人々の歴史と記憶を神話的な物語としてハルムトに語る祖父の言葉が全篇に散りばめられ、ハルムトを導いていく。祖父の物語からはブヌン族の心が、野球のコーチのサウマの物語からはアミ族の心が、料理屋の雄日さんや駐在所の城戸所長の物語からは日本人の心が、ハルムトの心の中に注ぎ込まれていく。 物語作家としての真骨頂が発揮された、後世に残る名作。

真の人間になる(下)真の人間になる(下)

出版社

白水社

発売日

2023年8月8日 発売

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1945年9月、日本人も犠牲となった「三叉山事件」をモチーフに、ブヌン族の少年ハルムトの成長を描いた感動の大作。17年かけて執筆し、台湾・中華圏の文学賞を制覇した注目作、ついに日本上陸! 上巻では、終戦前後の混乱した状況下で「三叉山事件」が起こるまでが描かれる。 台湾原住民族のブヌン族の少年・ハルムトとハイヌナンは、子供のころから野球が好きで、アミ族のコーチ、サウマが率いる野球チームに入る。1941年春、霧鹿部落を離れ、花蓮港中学に進学した二人は甲子園出場を目指して練習に励む日々を送る。だが真珠湾攻撃が起こり、野球どころではなくなってしまう。 ハルムトは、日本人が営む料理屋で働きながら学校に行くことになり、学校や仕事場で日本人、漢人、他の原住民族の学生たちと接する中で、ブヌン族としての自覚を強くし、ハイヌナンに友情以上の思いを抱くようになる……。 下巻は「三叉山事件」が実際に起こってからの出来事が中心に描かれる。 第二次世界大戦が終結して間もない1945年9月10日、米軍の輸送機が捕虜を乗せて沖縄からフィリピンのマニラへ向かっていた。台湾上空を飛行中、台風に襲われ、台東に位置する三叉山の付近に墜落。この霧鹿部落出身で山に詳しいハルムトは、駐在所の城戸所長から捜索を頼まれるが、行く気持ちになれずにいた。悩んだ末、ハルムトは捜索隊に加わり、山の中に入っていく。そして負傷したアメリカ兵のトーマスを偶然発見するが……。 ブヌン族の歴史を背負いながら、日本統治下の多民族多言語の世界で青春時代を過ごしたハルムトは、戦争による心の傷を抱えながら、多くの人たちの影響を受けて成長していく。終戦前後の台湾社会を原住民の視点から描いた作品の中で、これほど日本人との関わりを細やかに書き込んだものは他にない。三叉山事件で犠牲になった城戸八十八は「城戸所長」として本書に実名で登場している。 台湾の美しい自然を背景に、その土地で生きてきた人々の歴史と記憶を神話的な物語としてハルムトに語る祖父の言葉が全篇に散りばめられ、ハルムトを導いていく。祖父の物語からはブヌン族の心が、野球のコーチのサウマの物語からはアミ族の心が、料理屋の雄日さんや駐在所の城戸所長の物語からは日本人の心が、ハルムトの心の中に注ぎ込まれていく。 物語作家としての真骨頂が発揮された、後世に残る名作。

冬将軍が来た夏冬将軍が来た夏

出版社

白水社

発売日

2018年6月19日 発売

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台湾の鬼才が紡ぐ、人生を癒す終活小説  大河巨篇『鬼殺し』で好評を博した、台湾の若手実力派作家、甘耀明の最新作。台中を舞台に、身寄りのない老人など社会的弱者に着目し、主な登場人物は全員女性という新境地となる長篇小説である。  主人公の「私」は、大規模な幼稚園に勤める二十代の女性保育士。ある年の夏、十数年音信不通だった祖母が、私に会いにやってきた。末期の肺がんに冒された祖母は、気がかりだった孫娘に、死ぬ前に会う責任があると思い、自らが営む小型の共同ホームの老女たち五名と老犬一匹と共に私の家に姿を現した。ちょうどその時、私は自宅で幼稚園の園長の息子にレイプされ、祖母は唯一の目撃者となる。私の心は傷つき、園長の息子を告訴し、幼稚園を退職、祖母を含めた共同ホームの老女たちと行動を共にするようになる。祖母の終活に寄り添いながらひと夏を過ごした私は自己回復していく……。  女性問題、独居老人、同性愛など、現代の台湾社会が抱える問題を捉えつつ、著者のまなざしは、社会的弱者の心を温めて“生”をいろどる“記憶”に注がれる。それが厳しい現実を生き抜く支えになるというメッセージをユーモア溢れるタッチで描いた傑作。解説・高樹のぶ子

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