著者 : 皇城一夢
風月綺 江南王都に季節は巡り風月綺 江南王都に季節は巡り
その女は、小舟の船首に腰掛け寛いだ様子で微笑んでいた。舟の中には、血塗れの武芸家たち。「お会いできて光栄です、洪八生殿」比類無き武芸を誇る侠客党党首は、天下随一の絶技『剛竜十八手』をもって打ち掛かったが、女はしなやかな手で易々と防いだ。文革の高波続く中国。表社会の混乱に呼応するように、闇社会の均衡もまた、崩れていた。地仙の少女・選杯の内功修行を監督中の陸風箔が、どこか見覚えのある美女・袁桃花に出会ったのはそんな夜の事。父親捜しの依頼を面倒だからと即座に断ろうとした風箔だったがー。旧正月直前の南京を訪れた風箔の人捜しは、大物武芸家の失踪や不可解な連続殺人事件に絡み、意外な展開を見せる。錯綜する謎と多彩なキャラクターが織りなす武侠ミステリー、第2弾。
風月綺風月綺
暴力と権力がはびこる’70年、中国。上海は秘密結社・侠客党の手で護られていた。が、文革の嵐にまぎれ、南の紅花党が振興を開始。闇社会もまた、混乱していた。「俺を指名しして来た奴を。…殺したのか」悲しげに問うた男の名は、侠客党の若きエリート・風箔。絶世の武芸と冴えた頭脳をもちながら、人を殺せなくなった青年である。「敵の数は、減らせるときに減らす」刃物のような声は、上司の探刻。風箔の心の傷を分かち合う美貌の友。「まだ、殺せぬか。私はもう…顔も思いだせん」探刻は風箔に手を汚す必要のない仕事を命じる。党のパトロンの洋館へ行き、財宝のありかを示す暗号を解けというのだ。相棒は、妙になまいきな少女・選杯。一見平穏な任務に見えたがー。上海の闇の中、蒼き狼は胸を疼かせ真実を追う。第4回富士見ヤングミステリー大賞最終選考作。
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