小説むすび | 著者 : 真崎義博

著者 : 真崎義博

瓦礫の都市瓦礫の都市

ユーゴスラヴィア連邦は分裂し、ボスニアでは内戦が勃発した。かつて民族融和の象徴であった首都サラエボは、包囲するセルビア人勢力と、クロアチア人、ムスリム人が鉾を交える最前線と化す。街には砲弾が撃ち込まれ、高台からは狙撃手が無差別に市民を銃撃してくる。そのサラエボの一画にある高層アパートで、腐乱した女性の他殺死体が発見された。だが、現場は戦闘の激しい地区で、警察といえども近づくことが出来ない。戦闘の激化とともに弱体化したサラエボ市警は、すでにその組織の大半が崩壊し、機能を停止しかけていた。だが、刑事部長のロッソ警視はあきらめなかった。そんな状況でも、法と秩序は守られねばならない。部下は動けず、鑑識もなく、写真班もいない。電話もコンピューターも使えない。検死すらも困難だったが、彼は敢然と捜査に赴いた。だが、事件の裏には思いもかけぬ巨大な影がうごめいていた…。常識の通用しない戦場で展開される、捜査と闘いの四日間。かつて内戦下のサラエボに駐在した気鋭ジャーナリストが、その体験を活かして描く、異色の警察小説。

冬の獲物冬の獲物

米国中西部ウィスコンシン州の田舎町。吹雪の夜に、湖畔の森をスノーモービルで駆け抜ける「アイスマン」。コーン・ナイフを片手にラクール一家の住む白い家へと接近していく。まず、父親フランクを、次にその妻クローディアを殺し、最後に一人娘の少女リサを生きたまま切り刻んで殺害。そして、なぜか家に放火して立ち去った。全焼した現場を訪れたルーカス・ダヴンポート。警察を辞めたあとフリーの立場で異常殺人の捜査を手伝っている。今回はオジブウェー郡の保安官シェルダン・カーが応援を求めてきた。ダヴンポートは現場検証で出会った女医ウェザーに心惹かれるものを感じる。「アイスマン」はある写真を捜していた。全裸の少年がベッドでポーズをとり、前景には太った中年男の腰から下が写った写真で、その少年は2ヵ月前に殺されていた。秘密を暴露しかねないその写真はラクール家にあるはずだった。しかし写真は見つからず、「アイスマン」は一家を皆殺しにしたあげく、写真の存在を消そうと家に火を放った。タヴンポートの聞き込み捜査が進み、事件の鍵をにぎる写真の存在に気づくと、今度は、ダヴンポートと接近しはじめた女医ウェザーが「アイスマン」に狙われはじめた。…「アイスマン」とは果たして誰なのか。そして連続殺人の背後にある意外な真実とは。-小さな閉鎖社会における異常な犯罪者の心理状態を鮮やかに描く「獲物」シリーズ最高作。

このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP