著者 : 石井光太
子をはぐくむのは血ではなく愛のつながり 1926年石巻で生まれた菊田昇は、母が経営する遊郭で幼少期を送り、遊女の悲哀を目の当たりにする。その後、東北大学医学部に進学。卒業後は、産婦人科医となり、望まぬ妊娠をした女性が子供を堕ろすことなく、子供を欲する夫婦の実子となるよう非合法な縁組みを始める。法を犯してでも小さな命を守ることを優先、多くの赤ちゃんの命を救うこととなる。ところが、その事実が新聞にスクープされ、世間を揺るがす事件に発展。 日本医師会からの処分、国会招致、家宅捜索など、幾多の試練にさらされ、それでも命を守るという信念を曲げることなく、国を相手に闘い続けた昇は、悲願の「特別養子縁組」制度を勝ち取った。 ノンフィクションの旗手・石井光太氏が取材を重ね、「赤ちゃんあっせん事件」の裏にある真実を描いた小説。 【編集担当からのおすすめ情報】 一人の人間の勇気と信念で、法律を変えることができるということを教えてくれた物語。自分の人生を犠牲にしてまで、赤ちゃんの命を守りたいという思いに、何度も、涙がこみ上げる。「特別養子縁組」という言葉が世に浸透して久しい中、改めてこの法律が制定された奇跡と尊さを感じる。多くの人に手に取っていただきたい1冊です。
多額の借金を抱える看護師の小河恵。キャバクラでも働くなど返済のため奔走していたが、同僚の看護師・鹿沼好江に誘われて“社長”のホームパーティーに行き、“社長”に借金の肩代わりをしてもらい、イラン人・トニーから求愛され、好江たちと豪華な海外旅行を繰り返すなど生活が一変。恵は、好江がマレーシア=成田間で“荷物”を運ぶバイトをしていることを知り、好江の不在時に彼女の息子・純の面倒をみるようになるがー。東北の小さな町出身の日本人女性が、アメリカ同時多発テロ以降の国際犯罪組織に巻き込まれ、異国で死刑判決を受けたのはなぜか?!骨太社会派エンタテイメント小説の誕生!
ある者は朝食を用意している最中に、或いは風呂を沸かしたまま、忽然と姿を消した。四国山間部の集落で発生した老人の連続失踪事件。重要参考人となった父に真相を質すべく現地に赴いた医師は、村人が隠蔽する陰惨な事件に辿り着く。奇妙な風習に囚われた村で起る凶事。理不尽な差別が横行した60年前の狂気が、恨みを増幅して暴れ出すー。ハンセン病差別の闇を抉る慟哭の長編小説。
四国の山奥の村で、謎の連続老人失踪事件が発生した。容疑者となった父親の真実を探るべく、私は現場へと向う。だが、そこには歴史上最も凄惨な「人権蹂躙」の闇が立ち込めていた…。人間はどこまで残酷なのか。生きることに救いなどあるのか。長年の構想が結実した情念の巨編!血塗られた「差別」の狂気が、六十年の時を経ていま蘇るーノンフィクションの旗手が世に問う、慟哭の社会派ミステリー!