著者 : 石坂洋次郎
北国のミッション系女子校で国語教師をしている間崎慎太郎は、聡明な同僚・橋本スミ子に心を奪われつつも、早熟な女生徒・江波恵子に翻弄されていた。江波たちの学年が参加する修学旅行の引率を無事終えた間崎だが、学校内で生徒のお金が盗まれる事件が起き、その対処法をめぐってスミ子と対立してしまう。そして、ほどなく江波が間崎の子を妊娠しているという噂が立ち上りー。何度も映画化、テレビドラマ化された青春文学の金字塔にして、第1回三田文学賞に輝いた石坂洋次郎の出世作・完結編。
「私は男を知りたい。その男を通して私の父を感じたい」-。容姿端麗、頭脳明晰だが、たびたび問題を起こす女学生・江波恵子。理知的で美しい女教師・橋本スミ子。北国のミッション系女子校で国語教師をしている間崎慎太郎は、橋本に惹かれながらも、早熟で危うい魅力を放つ江波からも目が離せない。江波たちの学年の修学旅行に同行することになった間崎は、旅先で橋本の義母に会うことになり…。何度も映画化、テレビドラマ化された青春文学の金字塔にして、第1回三田文学賞に輝いた石坂洋次郎の出世作・前篇。
戦後まもない1947年に新聞小説として連載され人気沸騰。その後、いちやく大ベストセラーとなった青春小説の代名詞ともいえる作品。元々、高校教師であった筆者・石坂洋次郎が、東北地方の私立女子高校を舞台に、戦前の暗くじめじめした封建性を打破し、民主的な社会の実現を目指す人々の姿を爽やかに描きあげ、新風を巻き起こした。幾度も映画化され、作品発表から七十年余を経た現在でもまったく色あせない瑞々しい傑作である。
エキセントリックな言動の陰に、もろく傷つきやすい心を隠した美少女恵子は、若い教師間崎に想いを打ち明ける。クールで知的な同僚教師の橋本にあこがれながらも、奔放で官能的な恵子の誘惑を拒むことができない間崎が、ついに恵子を受け入れたとき、彼女は思いがけない行動に出たー。若さゆえに迷い、自らを追いつめていく激しい魂の行方を、北国の女子校を舞台に清冽に描く。