著者 : 石垣直樹
もうひとつの唐人お吉物語もうひとつの唐人お吉物語
江戸時代末期、下田に来航したハリス(初代駐日アメリカ領事)の世話役を命じられた一人の女性がいた。後世、小説や舞台で「唐人お吉」として広く知られるようになった斉藤きちである。新渡戸稲造はお吉の生涯に深く感銘し、「からくさの浮き名のもとに枯れ果てし君が心はやまとなでしこ」という歌を贈ったばかりでなく、お吉が身を投げたお吉が淵近くに「お吉地蔵」を建立した。伊豆下田の宝福寺に残る逸話の数々は、お吉が幕末の志士とともに開国運動にも奔走した強くて美しい女性であったことを物語っている。その半生を今に語り継がんとする著者至誠の唐人お吉伝。 第一章 黒船 少女/芸妓/黒船/大地震/白羽の矢/抵抗/裏切り/決心 第二章 世界 石つぶて/孤独/牛乳/世界とクロス/国のため/江戸へ/帰国 第三章 維新 新たな出会い/京都/唐人お吉/同じ夢/維新 第四章 無情 再会/同情/帰郷/唐人まげ/嫉妬/別れ、再び/金本楼/安直楼/火事/無情/説得 第五章 静寂 安らぎ/物乞い/おにぎり/豪雨の舞/静寂/お吉の涙/覚悟/後悔/やまとなでしこ 年譜
伝承秘話唐人お吉伝承秘話唐人お吉
江戸時代末期、二百数十年続いた鎖国の世、お吉は下田に来航したハリス(初代駐日本アメリカ領事)の世話をする係を命じられました。そのために人々から「あなたは日本人じゃない」という意味で「唐人」と差別的に呼ばれたのです。しかし宝福寺に残る逸話の数々は、彼女がとても強く美しい心をもった「やまとなでしこ」であったことを物語っています。『武士道』の著者、新渡戸稲造はそんなお吉のために「からくさの浮き名のもとに枯れ果てし君が心はやまとなでしこ」という歌を残しました。
PREV1NEXT