著者 : 神山朋子
未完の巨人人形未完の巨人人形
春も浅い「ミ=カレーム」の祭りの季節。北仏アズブルックに、かつての恋人の消息を尋ねて一人の男がやって来る。だが、二人の再会の場は痛ましい殺人現場と化した。放心し、恋人の死体に見入る男。かたわらには、カーニバルの巨人人形が撃ち抜かれた眼窩をさらして横たわっていた。男はカダン刑事に逮捕され、「精神錯乱」と診断を下される。1年後、男はジョン・レノンの『イマジン』のテープに吹き込んだ告白をカダン宛てに残して、精神病院で自殺した。はたしてその告白は、真実なのか妄想なのか。単身、再捜査に乗り出したカダン刑事の前に、やがて複雑にからまった事件の全貌が浮かぶ上がってくる。社会から転落し、犯罪に巻き込まれてゆく若者たちの姿を描き出した、哀感漂う作品。
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