著者 : 神林長平
『戦闘妖精・雪風“改”』『グッドラック』『アンブロークンアロー』、そして最新作『アグレッサーズ』まで、四十年以上にわたる神林長平のライフワーク“戦闘妖精・雪風”。その第一作を初の単行本化。深井零と雪風との出会いを描く書き下ろし短篇「棘を抜く者ーエピソード零」、少年時代の零を描いた名篇「ぼくの、マシン」の再録に加え、一九八二年、一九九九年、二〇〇九年、そして二〇二二年の語り下ろしと、四つの時代のインタビューでたどる「神林長平と雪風の40年」を収録した、ファン必携の完全保存版。
ロンバート大佐を介在させたジャムは、対人類戦に勝利し、地球への侵入を果たしたーそれがクーリィ准将以下FAF特殊戦の分析だった。ブッカー少佐は、特殊戦の生き残りのため、雪風ら機械知性たちの対ジャム戦略を探ることを提言する。一方、雪風とともに地球から帰還した深井零と桂城少尉は、無人のFAF基地に降り立つ。雪風による意識への介入を疑う零は、状況把握のため中枢司令コンピュータへと向かうー。やがてクーリィ准将は、“ジャムを演じる”アグレッサー部隊を特殊戦に新設、雪風とレイフの参加を決定する。対して、地球連合軍からの戦闘飛行部隊が派遣されるが、それはフェアリイ星に思いもかけない戦況をもたらすことになる。『戦闘妖精・雪風“改”』『グッドラック』『アンブロークン アロー』に続くシリーズ第4作。
火星の古いコロニー、ラムスタービル。ビルマスターのナミブ・コマチは、地球人が残していった“全地球情報機械”を探索するのが生き甲斐だった。そんなある日コマチは、火星人の寿命九十歳を拒否して「死ぬまで生きたい」と言う祖母アユル・ナディに共感している自分に戸惑う。子孫を残すことー自らの性欲を自覚したコマチは、火星で初めての男児ハンゼ・アーナクを産み落とす。それは、火星と地球をめぐる“わたし”と“いま”の相克のはじまりだったー神林長平、作家デビュー四十周年記念作品。
長野県の松本で暮らす作家のぼくは、連絡がとれない父・伊郷由史の安否を確認するため、新潟の実家へと戻った。生後3ヶ月で亡くなった双子の兄とぼくに、それぞれ“文”“工”と書いて同じタクミと読ませる名付けをした父。だが、実家で父の不在を確認したぼくは、タクミを名乗る自分そっくりな男の訪問を受ける。彼は育ての親を殺して死刑になってから、ここへ来たというのだが…著者の作家生活における最大の野心作。
人工人格家電の自殺疑惑、非実在キャラクターを殺したと主張する被告人、雇用を迫る対人支援用ロボット。起こりえない事件を解決するため男たちは燭台に火を灯す。それは「真実を映し出す」と語り継がれる、フォマルハウトの三つの燭台。
二〇二八年市民皆武装立国法により各家庭には携帯型対空ミサイルが配備。そのシステム管理と物故市民のネット内人工人格を消去することが安曇平市役所で働くぼくの仕事だ。出奔した父が他界して十数年。目の前に死んだはずの親父のアバター=ネットファントムが現れた。日本SF最高峰作家、講談社文庫初登場!
宮部みゆき「星に願いを」-ありふれた日々を稲妻のように切り裂く、思いがけない出来事とは?飛浩隆「海の指」-SFの枠でしか描けないグロテスクで魅惑的なヴィジョン。木城ゆきと「霧界」-「海の指」が描くヴィジョンから、新たに魅惑的な光景を幻視する。宮内悠介「アニマとエーファ」-人間ならぬ存在はいったいどんな物語を紡ぐのか?円城塔「リアルタイムラジオ」-ワールドの外にはリアルタイムが存在し、そこからラジオが流れてくる…。神林長平「あなたがわからない」-“空気が読める”“他人の心がわかる”とはどういうことなのか。長谷敏司「震える犬」-類人猿を通して、人類自身の姿が浮き彫りになる。常識を震わせる、七つの風景。
長野県松本で暮らす作家のぼくは、連絡がとれない父・伊郷由史の安否を確認するため、新潟の実家へと戻った。生後3ヶ月で亡くなった双子の兄とぼくに、それぞれ“文”“工”と書いて同じタクミと読ませる名付けをした父。だが、実家で父の不在を確認したぼくは、タクミを名乗る自分そっくりな男の訪問を受ける。彼は育ての親を殺して死刑になってから、ここへ来たというのだが…神林長平、三十六年目の最新傑作にして、最大の野心作。
デジタルデータのみを破壊する「情報震」が地球上で頻発している。原因はおろか震源地すら特定できない。あらゆる情報が崩壊し、機能を失った大都市からは人の影が消えた。偵察のためトウキョウに進駐した日本情報軍機動観測隊は、想定外の「敵」と出会う…。
高校生のころに、父が死んだ。祖父の田畑を勝手に売り払い、母とぼくを捨てて出奔した親父を、憎まずにはいられなかった。-あれから十数年。日本には、各家庭に一台、携帯型対空ミサイル(略称:オーデン改)が配備されている。安曇平市役所の電算課電子文書係で働くぼくの仕事は、故人となった市民の、ネット内の人工人格=アバターを消去することだ。しかしある日、ぼくの目の前に、死んだはずの親父の人工人格が現れたー。
地球のジャーナリスト、リン・ジャクスンに届いた手紙は、ジャムと結託してFAFを支配したというロンバート大佐からの、人類に対する宣戦布告だった。ついに開始されたジャムの総攻撃のなか、FAFと特殊戦、そして深井零と雪風を待ち受けていたのは、人間の認識、主観そのものが通用しない苛酷な現実だったー。『戦闘妖精・雪風(改)』『グッドラック』に続く、著者のライフワークたる傑作シリーズ、待望の第3作。
ロングピース社が開発した著述支援用人工知能CAWシステムが出力する、悪名高き宇宙海賊・〓(とう)冥の物語ー火星の赤い砂漠の町サベイジのバー“軍神”で、〓(とう)冥はフィラール星の女官長シャルファフィンと名乗る女の訪問を受け、火星で行方不明になったという王女の捜索を依頼されるが…王女捜索に乗り出す〓(とう)冥、それを追う宇宙海賊課のお荷物刑事ラテルとアプロがくりひろげる、記念すべきシリーズ第1長篇の新装版登場。
イラストレーター森山由海(別名フジワラヨウコウ)氏のオリジナル・イラスト二点を渡された三人の小説家が、そのイラストが扉絵・挿絵になるような短篇小説を執筆。森山氏はそれぞれにあらためて三点目のイラストを描き下ろすー。「SF Japan」と「問題小説」の二誌にまたがって、三年間連載。二十四名の人気作家が集結し腕を揮った前代未聞の競作企画が遂に単行本化。まずは第一弾、「奏の1」の開演。
対海賊課刑事ラテルと黒猫型宇宙人アプロは、ある少女の叔父捜しを依頼されるがー“海賊版”ではない本家本元「敵は海賊」、あの〓(よう)冥も一目置いた女海賊マーゴ・ジュティが遭遇した怪奇現象を描く「わが名はジュティ、文句あるか」、〓(よう)冥の良心たる白猫クラーラ誕生の秘密を初めて明かす書き下ろし「〓(よう)冥の神」、そして、あの戦闘妖精との競演を果たした「被書空間」-以上4篇収録の敵は海賊シリーズ初の短篇集。
火星で目覚めた素性不明の男は、自らを永久追跡刑事と称した。この世界を創造し、自由に改変する能力を持つ犯罪者・ボルターを追っているという。戦略情報局のケイ・ミンはその話を疑いつつも、彼の真摯で誠実な態度に惹かれていく。ボルダーの巧妙な世界改変による攻撃に対抗しつつ絆を深め合う二人だが、情報局の人工知性体・マグザットの介入も加わり火星崩壊が迫るー虚実混交の中で信頼と陰謀がせめぎ合う傑作長篇。
タイタンの首都メカルーク。市警警部のネルバルと広域宇宙警察の実習生サティが現場で目撃したのは、八体の惨殺死体と「海賊を始末した」という犯行声明だった。いっぽう海賊課刑事のアプロとラテルは、「海賊に間違われた」という同僚刑事セレスタンの通信を受け、貨客船ハウバウアー号に急行する。それは、海賊課の存在意義を葬り去るべく〓(よう)冥が仕掛けた周到なゲームの始まりにすぎなかったー。待望のシリーズ第7作。