著者 : 神林長平
「僕は殺し屋になりたい。高校生という役割を演る(ロールプレイ)のはもうごめんだ」陽奥峯士は思った。三週間前、全てがロールプレイに過ぎないことに気付いてから、学校にいくのは止めた。担任がやって来るのも、母親がおろおろするのも、それぞれの人間の役割だからそうするだけ。現実とは、都市のすべてのエネルギと物質と情報を管理する、都市中枢制御体・クォードラムが与えてくれた虚像にすぎない。果せるかな、そんな峯士の願いは聞き入れられた…。発狂し壊れてく「未来都市」を描き出す、鮮烈サイバーシティ・ファンタジー!
月面都市の地下深く、楽園を築き、そこに生きる人々-ルナティカン。彼らは、地上に住む月人から隔絶され、蔑視を受けていた…。巨大企業に利用されてアンドロイドの両親に育てられる少年・ポールは、自分がルナティカンであることを知り、驚愕する。地下世界行きを決意した少年は、冒険に旅立った。珠玉の傑作長編SF。
「くび!」ラテルは自分の耳が信じられなかった。くそいまいましい黒猫型宇宙人アプロだけでなく、自分も広域宇宙警察をくびになるとは。だが無情にも、対海賊課チーフ・バスターは、二人がいるきかぎり対海賊課の評判は落ちる一方、損害賠償は増える一方、といいはなった。仕方なく、チーフ・バスターからもらった再就職の推薦状の宛先へ出向いた一匹と一人だったが…待ちうけるのは稀代の宇宙海賊・〓冥、そして恐るべき武器は人間もコンピュータも“猫”にしてしまうCATシステムだった!てんやわんやのアプロとラテルの活躍、第2弾!
冷凍睡眠を使い、光速と比べられる宇宙船の速度を利用し、時間という盾に隠れて逃げつづけてきた永久逃亡犯。そして彼を捕え、火星の永久警察へ連行しようとする永久刑事。二人の乗りこんだ民間宇宙船が救難信号を受信したことから、敵味方であるふたりは難破船の捜索に赴いたのだが…「渇眠」、酸性雨が降りつづく都市で起きた連続殺人事件の謎を追う「酸性雨」、ひとりひとりのパーソナル・コンピュータが人格の一部になっている未来世界を描く「兎の夢」など、星雲賞受賞作家・神林長平の才気をあますところなくつたえる中篇4篇を収録する。
おれ-邑谷武は、人間-機械のハイブリッドソルジャーだ。火星陸軍の1等兵として無機生命体・マグザットと戦闘を繰り広げてきた。だがマグザットに急襲されて、意識を失った-そしてここは地球、1986年。ある日、おれの脳に組み込まれたTIPがコンピュータとシンクロし、ディスプレイに火星の戦友・中条光則の助けを求める姿が映し出された。崩壊していく現実の中で、火星のイメージと風景がオーバーラップした時、おれは2131年にいた。そこで、首なし死体となった中条に再会する。謎をとくため、おれは彼の恋人・絵里奈の家へ向った。