著者 : 秦邦生
『ダロウェイ夫人』出版百周年! 1923年6月半ばのある一日の出来事は、百年後を生きるわたしたちの日常に意外なほど似ているのではないか。パンデミック、トラウマ、人種、ジェンダー、都市空間、トランスナショナル、マルチバース、気候変動……孤立した意識に共感の息吹をもたらすべく、モダニズム文学を現代的に精読する まえがき 小川公代 序 百年後の『ダロウェイ夫人』 秦邦生 現代の小説 ヴァージニア・ウルフ(秦邦生訳) 「そこに彼女がいたから」--『ダロウェイ夫人』における愛と現前 ジリアン・ビア(柳澤彩華訳) 「六月のこの瞬間」--ダロウェイの日からの一世紀 ポール・サンタムール(西脇智也・古城輝樹訳) 読書する時空間ーー『ダロウェイ夫人』の読者たちを読む 中井亜佐子 ダロウェイ夫人と存在の偶然性ーー「向かいの家の老婦人」の謎について 田尻芳樹 仮面としての衣服ーーファッションから見た『ダロウェイ夫人』と『オーランドー』 小川公代 ヴァージニア・ウルフの「魔法の庭園」--『ダロウェイ夫人』における樹木たちの生死 秦邦生 別の時間とこの人生ーー『ダロウェイ夫人』を『エブエブ』『歳月』とともに読む 河野真太郎 都市とモダニズムーー英語圏現代文学における『ダロウェイ夫人』の残響 星野真志 トランスナショナルな書物史ーーエンプソン、宮本百合子、左川ちかによるウルフの受容 松本朗 『ダロウェイ夫人』をこれからも日本の大学で読むためにーーフェミニズムの差異・交差性・人種 松永典子 [インタヴュー] ヴァージニア・ウルフと韓国文学 斎藤真理子(聞き手・小川公代) [インタヴュー] ヴァージニア・ウルフと松田青子文学について 松田青子(聞き手・小川公代) [作品] 同胞を愛した男 ヴァージニア・ウルフ(片山亜紀訳) 文献案内ーー〈あとがき〉に代えて 秦邦生
ディストピアに希望を探れ。文学という枠を越え出て、政治や社会のあり方、あるいは日常生活の襞にいたるまで、今やあらゆる領域へと越境し増殖を続ける『一九八四年』の世界。動物、ジェンダー、情動、“ポスト真実”やポピュリズムといった多様な観点からの精読や、受容史やアダプテーションなど関連作品の分析を通してこの文学的事件の真価を問う。今と未来を生き延びるための『一九八四年』読解。
最高傑作との呼び声高い原作小説はもちろん、イギリスでの映画化作品、綾瀬はるか主演のテレビドラマ版、蜷川幸雄演出の舞台版まで、『わたしを離さないで』だけを徹底的に読み尽くす画期的作品論集! 未刊行の草稿ノート類への渉猟も踏まえ、カズオ・イシグロの稀有なる創造力の核心へ一挙に斬り込む!