小説むすび | 著者 : 立石光子

著者 : 立石光子

世紀の小説『レ・ミゼラブル』の誕生世紀の小説『レ・ミゼラブル』の誕生

傑作小説の評伝  1862年4月4日に発売されるや、翌日午後にはパリで第1部上下巻6000部が完売。第2・3部の発売日には朝6時に早くも出版社の前の通りは人であふれ、行列の整理のために警察官が出動する騒ぎに。そして『レ・ミゼラブル』は世界各地でベストセラーとなる。本書はその執筆・出版の過程を縦糸に、小説の背景となる世界経済やユゴーの用いた技巧の考察から、翻訳のいきさつや意外な読まれ方、ミュージカル・映画などの受容までを横糸に織り上げた、いわば「小説の評伝」である。  この作品の背後には多くのものが隠れている。たとえば、マドレーヌ氏ことジャン・ヴァルジャンが模造黒ガラス玉でたちまち莫大な財産を手にした事情は、当時の世界史から推測できる。刊行当時、新聞にはこの作品に対して手厳しい批評がいくつも掲載されたが、マドレーヌ氏が財産を築いた方法にけちをつけたものはひとつもなかった。また、当時のパリの地理と作品中の地理との比較からはユゴーの政治的な心情が、ジャン・ヴァルジャンの囚人番号からは苦悩が透けて見える……。  おなじみの物語の違った顔が楽しめる一冊。

詩神たちの館詩神たちの館

謎の隠遁作家の正体を追ううちに、運命の渦にのみこまれていく青年二人の物語。経歴を明かさず、メディアにも姿を見せない正体不明の作家ホラス・ジェイコブ・リトルは何者なのか?マンハッタンの新聞社で働く新人記者ジェイクは特ダネを狙っていた。学生時代に愛読した作家の素性をつかもうとしていたジェイクは、ある日昔の恋人ラーラから同級生だったアンディの噂を聞く。アンディはリトルの短篇を読んで以来、作家の正体をつきとめることに取り憑かれ、“作家の秘密を暴露した”手記を携え出版社に乗りこんで刃物を振り回すなどの奇行を繰り返し、今は“ミューズ・アサイラム”にいるという。ジェイクは、精神を病んだ芸術家たちのためのその施設にアンディを訪ねた。秘密を知ってしまったため、自分は作家から命を狙われているというアンディの主張は信じがたかった。だが、リトルの小説を仔細に調べていくうちに、恐るべき真実が明らかになっていく…追う者がいつの間にか追われる者になる恐怖を描く、大型新人の衝撃作。

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