著者 : 立石光子
十七世紀、空前のチューリップ・バブルに沸くオランダ。球根一つが法外な高値で取引される街で、豪商の若妻と貧乏な画家は道ならぬ恋に落ちた。二人は自由を買うため過熱するチューリップ投機に全てを賭け、さらには妊娠した女中をも巻き込んだ“身代わり出産”を画策する…。フェルメールの絵画に着想を得て描かれ世界的ベストセラーとなった、愛と狂乱のサスペンス。
南北戦争の兵士も共産圏の人々も愛読した『レミゼ』。その執筆・出版の波瀾の過程を縦糸に、作品の背景となる世界経済やユゴーの用いた技巧から、ミュージカルや映画までを横糸に織り上げられた、大傑作小説の「伝記」。
料理下手なホリーは、夫が招待した会社の部下たちに朝食を振る舞うことになったものだから、大慌てで姉ストーリーに泣きついた。急遽、自分の店から食材を調達して、豪華な朝食を届けたストーリー。田舎パンにパンプキンパイ風味のはちみつバター、もぎたてフルーツにブルーベリー・マフィン…。万事うまくおもてなししたはずだったのに。なんと、用意したニンジンジュースに何者かが盛った毒で、客の一人が死亡!ストーリーはこの事件のせいで恋人の刑事ハンターとの甘い同棲生活に黄色信号が点滅、姉妹ともども警察から疑惑の目を向けられて大ピンチに。なんとかこの悪状況を打開しようと、ストーリーは真犯人を捜しだそうとするが!?
年に一度の“ハーモニー・フェスティバル”で町が賑わういっぽう、ストーリーはツイてないことばかり。「はちみつ女王」の座を逃したうえに、犬の散歩中に死体につまずくなんて!しかも、警察が到着したときに死体は忽然と消えていて、「ホラ吹き」呼ばわりされる始末。唯一、話を信じてくれた、事件記者パティを相棒に危なっかしい捜査をはじめると、空き家で消えた死体を発見。ところが、状況からすると犯人は…母の新恋人トム?真相を突き止めるべきか、生真面目な母がようやく手に入れた幸せを守るべきか。悩めるストーリーをあざ笑うかのように、犯人からの警告と思しきヒッコリーの実が、自宅前に置かれるようになり…!?美味しいはちみつレシピ付き!
1820年、ロンドン。町はずれに捨てられていた赤ん坊を、名門ラヴオール家の当主が連れ帰った。彼はその男の子を最愛の亡妹の生まれ変わりと考えローズと名付け、館の司書との間に生まれた継嗣とした。ローズは両親の愛と無二の親友ハミルトン姉弟の友情に包まれ、何不自由なく育った。だが思春期を迎え、“幸運の娘”の完璧な世界は崩れ去る。男であることを自覚しての激しい苦悩、父の死。財産を狙う親戚に正統な嫡子ではないと非難され、ローズと母は館を追放された。だが、ローズは放浪の旅の果て、ある物語詩に自らの出自究明の希望を見出す。一方、ハミルトン親子は代々伝わる暗号で記されたラヴオール家の年代記の解読を、母は館の図書室に収集されていた謎の詩人メアリー・デイの作品に隠された秘密を探っていく。やがてすべてが解明され、驚くべき事実が明らかに…。気鋭のミュージシャンが、壮麗な領主館を舞台に詩情豊かに紡ぐ、ディケンズ風サーガ。
山寧大学の楊教授が、脳卒中で倒れた。夫人はチベットに赴任中、娘の梅梅は北京で医学院受験に追われている。愛弟子で梅梅の婚約者でもあるぼくは、学部を取り仕切る彭書記から教授の付き添いを命じられた。病床で教授はうわ言を口走り、高潔で尊敬を集める人とは思えぬその言葉にぼくは驚く。どうやら経費の問題、不倫の疑い、何者かにゆすられている節もあった。意識の混濁する教授に翻弄され、迫る大学院入試の準備もできず、ぼくの苛立ちは募る。どんなに学問を究めても役人より格下でしかないと、学者の人生を悔いる教授の激しい憎悪と惨めな姿を目にするうちに、ぼくは自分の進路に疑問を抱く。そんなぼくを梅梅はなじり、去っていく。折りしも北京では自由を求める学生が続々と天安門広場に集まっていた。すべてを失ったぼくは北京へ向かうが…。全米図書賞受賞作家が天安門事件を題材に、非情な現実に抗う人間の姿を描く渾身の書。
謎の隠遁作家の正体を追ううちに、運命の渦にのみこまれていく青年二人の物語。経歴を明かさず、メディアにも姿を見せない正体不明の作家ホラス・ジェイコブ・リトルは何者なのか?マンハッタンの新聞社で働く新人記者ジェイクは特ダネを狙っていた。学生時代に愛読した作家の素性をつかもうとしていたジェイクは、ある日昔の恋人ラーラから同級生だったアンディの噂を聞く。アンディはリトルの短篇を読んで以来、作家の正体をつきとめることに取り憑かれ、“作家の秘密を暴露した”手記を携え出版社に乗りこんで刃物を振り回すなどの奇行を繰り返し、今は“ミューズ・アサイラム”にいるという。ジェイクは、精神を病んだ芸術家たちのためのその施設にアンディを訪ねた。秘密を知ってしまったため、自分は作家から命を狙われているというアンディの主張は信じがたかった。だが、リトルの小説を仔細に調べていくうちに、恐るべき真実が明らかになっていく…追う者がいつの間にか追われる者になる恐怖を描く、大型新人の衝撃作。