著者 : 笠岡治次
二十五歳の浦沢敦志はたった一人で探偵業を営んでいる。なぜかと言えば、事故の後遺症で、近くにいる人の未来が数秒ほど見えるようになってしまったからだ。見たくもないものが見えてしまう…以来、人を避けるようになった。そんなある日、敦志は高校時代の同級生・仮屋鹿ノ子と再会する。すると例の現象が起き、鹿ノ子が何者かに襲われているシーンを見てしまう。敦志は予知を頼りに事件を未然に防ごうとするが…!?「すこしだけ未来が見える」というままならない能力で奮闘する青年探偵を描く、新感覚ハートフル・ミステリー!
幼いころ、二人の兄とわかれ盗賊の頭領になった男。半年前から引き込み役を入れた東両国の太物問屋を襲うが、そこには下の兄がおり、町方たちが待ち伏せていた。上方が本店の江戸店の主にまで出世した次兄の人柄に惹かれ、手下が裏切ったのだ。賊を一網打尽にした北町奉行所定町廻り同心・神岡茂平は思う、百姓が嫌になり、上州渋川村から逃げるように江戸に出てきて紆余曲折の末、武士の養嗣子となった己と比べ、頭領の昔のわかれ道が、もし違っていたら…。江戸情緒溢れる人情時代小説。
船宿の船頭を表の稼業に、よろず揉め事を請け負う浪人・小佐々銑十郎。元は国家老の家柄で、直心影流の凄腕を持つ銑十郎に、蔵前の札差・大黒屋が持ち込んだのは、旗本同士の喧嘩の仲裁だった。その場を丸く収め、旧知の榊原を諍いから救ったかに見えたが、榊原の相手だった男が後日斬殺され、榊原に嫌疑が掛かる。友の窮地を救うべく立ち上がった銑十郎だったが、裏には旗本たちの醜い内輪揉めと勢力争いが絡んでいた…。好評シリーズ第三弾。
両替商から舟の扱いと凄腕を見込まれ、庄内藩江戸藩邸へ二千両を運搬する仕事を請け負った、よろず稼業・小佐々銑十郎。途中、大金を狙って襲ってきた賊を撃退するが、金は庄内藩嫡男の身代金で、一味を討伐したことで、誘拐された若君が危険にさらされると江戸家老は激昂する。だが、誘拐事件には裏があり、銑十郎は意外な展開を見せる後継者争いの陰謀に巻き込まれることに…。好評シリーズ第2弾。
浅草駒形町の船宿で船頭を生業にする小佐々銑十郎。二年前まで肥前大村藩の勘定方から近習を務めていたが、ひとつの失態が、実父であり筆頭家老の逆鱗に触れ、お役罷免となり勘当を言い渡された。妻子とも別れ、浪々の身となった銑十郎は、旧知の札差・大黒屋籐兵衛の計らいで下町に居を構え、籐兵衛が持ち込む萬請負をやっていた。家出人の連れ戻しや、町に巣食う無頼人を叩き出す見事な手腕を見せる銑十郎だったが、兄分の仇と恨む無宿人が、虎視耽々と彼の命を狙っていた…。