著者 : 米川良夫
文豪ゴーゴリの妻は空気の量によって自在にその姿を変えるゴム人形だった!グロテスクなユーモア譚「ゴーゴリの妻」、カフカの死んだ父親が巨大な蜘蛛となって現れる「カフカの父親」など、カルヴィーノ、ブッツァーティと並ぶイタリア文学の異才ランドルフィの奇想と諧謔に満ちた短篇群。奇妙な一行の超現実主義的な航海を描く「ゴキブリの海」を追加収録した決定版傑作集。
十八世紀イタリア、男爵家の長子コジモは、十二歳のある日、かたつむり料理を拒否して庭の木に登ると、以後、地上に降りることなく、木の上で暮らし始める。木から木へ伝って自由に移動し、森で猟をしたり、無法者と交際したり、読書に励んだりしながら大人になったコジモだが、時代はやがて革命と戦争へと動きだす。恋も冒険も革命もすべてが木の上という、奇想天外、波瀾万丈の物語。人間存在の歴史的進化を描いた“我々の祖先”三部作の第二作。
時は中世、シャルルマーニュ大帝の御代、サラセン軍との戦争で数々の武勲を立てた騎士アジルールフォ。だが、その白銀に輝く甲胄の中はからっぽだった。肉体を持たず、意思の力によって存在するこの“不在の騎士”は、ある日その資格を疑われ、証を立てんと十五年前に救った処女を捜す遍歴の旅に出る。付き従うは過剰な存在を抱えた従者グルドゥルー。文学の魔術師カルヴィーノが人間存在の歴史的進化を奇想天外な寓話世界に託して描いた“我々の祖先”三部作開幕。
現代イタリア文学を代表し、今も世界的に注目され続けるカルヴィーノの名作。ヴェネツィア生まれの商人の子マルコ・ポーロがフビライ汗の寵臣となって、さまざまな空想都市の奇妙で不思議な報告を行なう。七十の丸屋根が輝くおとぎ話の世界そのままの都や、オアシスの都市、現代の巨大都市を思わせる連続都市、無形都市など、どこにもない国を描く幻想小説。
『庭、灰』-少年に多くの謎を残し、アウシュヴィッツで消息を絶った父。甘やかな幼年時代が戦争によってもぎとられ、逃避行を余儀なくされる一家の悲劇を、抒情とアイロニーに満ちた筆致で描く自伝的長篇。初邦訳。『見えない都市』-ヴェネツィア生まれのマルコ・ポーロが皇帝フビライ汗に報告する諸都市の情景。女性の名を有する55の都市を、記憶、欲望、精緻、眼差というテーマで分類し、見えない秩序を探る驚異の物語。
ピノッキオは、ジェッペットさんのこしらえたあやつり人形。口をきいたりおどったりできるふしぎな人形ですが、いたずら好きでなまけもの。お話しするコオロギや空色の髪の妖精、船をも丸ごと飲みこむ大きなフカなどにであう大冒険の末、人間の子どもになれるでしょうか。十九世紀のイタリアでうまれ、世界中で愛されている児童文学の名作。
『くもの巣の小道』は『木のぼり男爵』、『マルコ・ポーロの見えない都市』等の奇想天外な現代小説の作者として知られる、イタロ・カルヴィーノの長篇代表作である。物語の舞台となるのは、第二次大戦中のドイツ占領下のイタリアの片田舎。娼婦の姉を持つ少年ピンは、姉の許に通うドイツ兵からピストルを盗み出したのがきっかけで、パルチザン部隊の一員となる。だが彼が加わったパルチザン部隊は、他の部隊からはみ出した奇妙な、愛すべき“落ちこぼれ”たちのふきだまりであった。自分が「病気だ」と主張してはばからないニヒリストの隊長ドリット、元船コックで“過激派”の食糧係マンチー、ガンマニアで元黒シャツ隊員のペッレ等々いずれ劣らぬクセ者たちとピンは“森の生活”を共にする。そして少年ピンの目の前で裏切り、待ち伏せ、報復、戦闘とパルチザンの“日常的光景”が次々と繰り広げられて行く…。本書はカルヴィーノの文学的原点であり、著者自身のレジスタンス体験から生みだされた、リリシズムに満たちネオ・レアリズム小説の傑作である。
シチリアの貧しい家庭に育ったパスカルは、ある日故郷をとび出し、モンテカルロの賭博場で思いもかけない大金を手に入れる。郷里で偶然発見された水死体を自分と誤認された彼は、全く新しい人生を始めようと決意するが…。人間のアイデンティティ(存在証明)を根源まで問いつめた、ノーベル賞作家の代表的長篇。