著者 : 経塚丸雄
公方様の御犬「仁王丸」も年頃になり、嫁とり話が持ち上がった。花嫁はやはり雌のマスチフで、名は「弁天」。体重13貫(約50kg)の堂々たる女丈夫である。が、初日に仁王丸が鼻息荒く強引に迫ったせいですっかり嫌われてしまう。わざわざ田沼老中まで動かし長崎から連れてきただけに、「気が合わなかった」ではすまされない。官兵衛は二匹の恋を実らせようと、御犬番の誇りを懸けて奮闘する。一方、小笠原家の三女・武の大奥奉公への面接試験「お吟味」も佳境を迎えていたー。笑いあり涙ありの御犬時代小説、感涙の完結編。
公方様にも咆えかかる巨躯の無礼犬「仁王丸」を見事に手懐けた小笠原官兵衛。幕閣の覚えめでたきは良きことなれど、そのせいで将軍・家治公の世継ぎをめぐる一橋家と清水家の御三卿同士の争いに巻き込まれてしまう。清水卿の心優しき人柄に惹かれる官兵衛だが、一橋家を推す老中・田沼意次派の御書院番士・長谷川平蔵からも迫られ、心は千々に乱れる。さらには、小納戸御犬番の同僚であり奇人変人として有名な長谷川外記と、長女・文との間に縁談まで持ち上がり、官兵衛の苦悩は汲めども尽きぬ。
11代家斉の時代ー江戸一番町の直参旗本家の次男として太平楽を送っていた高見沢彰吾。だが、兄に男子が生まれたことで厄介者となり、妻の忘れ形見である娘・志摩と家を出なければならなくなった。身分を捨てて尾張家家老・成瀬家の家来となった彰吾は、早速、中屋敷の用地買収を命じられる。屋敷奉行の兄とのつなぎ役として召し抱えられたわけではないと奮起する彰吾だったが、なぜか情報が漏れて思わぬ横槍が入り…。
小笠原官兵衛は高千五百石の直参旗本。嫡男として過保護に育てられたが、剣術と「鳥寄せ」の腕前は一級品だ。そんな官兵衛に「小納戸役」の話が舞い込んできた。担当は「御犬番」。将軍家治公に献上された巨大な犬「仁王丸」を飼い馴らす、というお役目だという。剣の師匠から「犬のよき主となれ」との教えを受けた官兵衛は、勇気を振り絞り、暴れ犬をしつけようと悪戦苦闘する。笑いあり涙ありの、お犬時代小説新シリーズ始動!
深川下屋敷に「預」の身となり、再起をはかる元若様須崎槇之補。狩人の魂と恃む気砲が壊れ、よからぬことが起こらねばよいが…と顔を曇らせた矢先、次々と難題が降りかかる。屋敷を見張る怪しげな目。義母加代の醜聞。人目を忍んで月に一度の外出をすれば、通りすがりの武士といざこざに。世が世なら大名だったのに、なんたる不運。いかに切り抜けるか槇之補!
須崎槇之輔は、元は信州須崎藩の世継ぎだったが、父の起こした刃傷沙汰の咎により、大和鴻上藩に「預」となってしまった。不遇をかこつこと五年。槇之輔は冷水を買う銭も惜しみ、趣味の狩猟と料理で無聊を慰めていた。そんな折、父の仇・城島家に再興の目が出ると、須崎家旧臣の一部が「城島、討つべし」と息巻き始めた!悩める若様に、御家再興の途はあるのか?
榊原家を実質的に取り仕切っている祖父の源兵衛が、何者かに拉致されてしまう。下手人はどうやら、前年秋に奉行に扮した新次郎たちに、「家質投資の出資者名簿」を奪われた両替商「筑紫屋」のようだ。さらに、筑紫屋の後ろ盾となっている老中・水野越前守の差し金で、新次郎は幕府評定所から召喚を受けてしまう。これまでの新次郎一味の数々の狼藉が、いよいよ白日の下にさらされてしまうのか!?驚天動地のシリーズ最終巻!
箱館戦争で敗残兵となり、深手を負った元幕府遊撃隊士の奥平八郎太は、実の兄・喜一郎と膝を撃たれ重傷の本多佐吉とともに、蝦夷地の深い森へと落ち延びる。犬死しても意味はないと、兄を一人逃がした八郎太であったが、残された瀕死の二人を待っていたものは人外の脅威だった。意識を失っていた八郎太が、再び目を覚ましたとき、そこにあったのは口元から顎にかけて真っ赤に血で染めた漆黒の大ヒグマであったー
新次郎が榊原家に養子に入ってから、はや二年。榊原家の年間収入が年々減っていることを祖父の源兵衛から責められ、挙げ句の果てには「儲けが減った分、利子をつけて、あと百日で七百二十八両を用立てろ」と厳命されてしまう。許嫁のお松に泣きつくも、色よい返事はもらえずに落ち込む新次郎だが、そんな折、旧友と再会し、「銭が確実に倍になる、とっておきの儲け話」を打ち明けられる。話題沸騰のシリーズ第四弾!
大目付の跡部信濃守が、“命の恩人”新次郎に「ぜひ婿入りして欲しい」と懇願してくる。お松との縁組の先行きが見えない新次郎、この申し出に心が揺れる。さらに、榊原家の食客となったお松の兄・梅太郎の処遇をめぐり、中間や小者の不満が高まり、家中が険悪な雰囲気に包まれてしまう。まさに八方塞がりの新次郎だが、そんなある日、珍しく兄の宇吉郎から呼び出され、驚くべき相談を受ける。疾風怒涛の新シリーズ第三弾!
正義漢だが無学単細胞の安藤新次郎は、旗本の次男坊。急死した叔父の末期養子として、母の実家の家督を継ぐことになった。その榊原家、家禄一八〇俵の小普請ながら、なぜかとても裕福。それもそのはず、実は榊原家は「義理欠く、見栄欠く、情け欠く」を座右の銘とする祖父源兵衛の指揮のもと、裏稼業で「金貸し」を手広く行っていたのだ。果たして新次郎に金貸しの親分が務まるのか!?勇往邁進、痛快無比の新シリーズ登場!