著者 : 羽生飛鳥
ーーこれまでの歳月を振り返ってみると、竹向殿と私(足利尊氏)とは、奇縁で結ばれているものですね。 後の北朝初代・光厳帝の典侍を務めた日野名子<ひのなかこ>は、関東申次として権勢をふるった西園寺家の若き当主・公宗の正室となる。だが彼女の栄光の日々は、後醍醐院の謀略と足利尊氏の裏切りにより、あっけなく失われることに。そしてそれは、数多の武家と公家、皇族が互いに争い合う、混沌の時代の幕開けだったーー。度重なる戦乱に人生をかき乱され続けた彼女が最後に見抜いた、尊氏の抱える「秘密」とは。 名子が著した、最後の宮廷女流日記文学として名高い『竹むきが記』を下敷きに、激動の室町幕府揺籃期を活写する歴史長編。
鎌倉時代、都でつつましく暮らす老侍。その正体は、かつて都中の人々に恐れられた大盗賊・小殿だった。足を洗った彼に興味を持ち、話を聞きに来た下級貴族の橘成季と仏師運慶、少年僧侶明けの明星の三人に、小殿はかつてある貴族の屋敷から真珠を盗んだ話を語る。客人三人は不可能と思える盗みを成功させた手口の謎解きに挑むのだが……。後鳥羽院、慈円、大姫ら鎌倉時代の重要人物たちが彩る、伝説の大盗賊をめぐる歴史ミステリ。 「真珠盗」 「顛倒」 「妖異瀬戸内海」 「汗牛充棟綺譚」 「雪因果」
「紫式部の和歌を屍に添えて汚す者は許せん。 下手人を突き止める!」 『小倉百人一首』に選出された和歌が事件解決の手掛かりにーー 若き藤原定家が、名歌の絡んだ五つの謎を解く! 一一八六年。平家一門の生き残りである、亡き平頼盛の長男、保盛はある日、都の松木立で女のバラバラ死体が発見された現場に遭遇する。生首には紫式部の和歌「めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに 雲隠れにし 夜半(よは)の月かな」が書かれた札が針で留められ、野次馬達はその惨状から鬼の仕業だと恐れていた。そこに現れた、保盛の友人で和歌を愛してやまない青年歌人・藤原定家は「屍に添えて和歌を汚す者は許せん」と憤慨。死体を検分する能力のある保盛を巻きこみ、事件解決に乗り出す! 後に『小倉百人一首』に選出された和歌の絡む五つの謎を、異色のバディが解く連作ミステリ。 ■目次 「一 くもがくれにし よはのつきかな」 「二 かこちがほなる わがなみだかな」 「三 からくれなゐに みづくくるとは」 「四 もみぢのにしき かみのまにまに」 「五 しのぶることの よわりもぞする」
遷都した福原の平清盛邸で、怪事件が続発! 清盛の異母弟・平頼盛は、 清盛とその三人の息子から 源頼朝との内通を疑われながらも、 守護刀紛失や変死事件の謎に挑むが!? 第4回細谷正充賞受賞作『蝶として死す』に続く、長編歴史ミステリ! 1180年。平清盛は、高倉上皇や平家一門の反対を押し切ってまで、京都から福原への遷都を強行する。清盛の息子たち、宗盛・知盛・重衡は父親に還都の説得と、富士川の戦いでの大敗を報告するため、清盛邸を訪問するが、それを機に邸で怪事件が続発してしまう。清盛の寝室から平家の守護刀が消え、平家にとって不吉な夢を喧伝していた青侍が切断された屍で発見され、「怪鳥を目撃した」という物の怪騒ぎが起きる。清盛の異母弟・平頼盛は、異母兄に捕縛を命令されていた青侍を取り逃した失敗を取り戻すため、甥たちから源頼朝との内通を疑われる中、事件解決に乗り出すが……。話題作『蝶として死す』に続く、長編歴史ミステリ!
平清盛の配下である童子・禿髪は、なぜ惨殺されたのか? 首のない五つの死体から、どうすれば探している人物を特定できるのか? 帝の庇護下にあった寵姫を、どのようにして毒殺したのか? --不可思議な謎に挑むのは、清盛の異母弟にして一族の裏切り者・平頼盛。平安時代ならではの、前代未聞の新しい謎を描いたと話題を呼んだ、第15回ミステリーズ!新人賞受賞作「屍実盛(かばねさねもり)」など5編を収録。新鋭が贈る歴史ミステリ連作集(受賞時の齊藤飛鳥名義より変更)。