著者 : 草上仁
あなたはこのお話のオチ、想像できますか?宇宙に放り出され生死をさまよう男たちが取った究極の選択とは?恐竜を探しに降り立った惑星で取材陣が出会った衝撃の真実とは?幸せな生活を願って二人の未来をシミュレートしたカップルが手に入れた真実の愛とは?思わずあっと驚く結末が、じわりと心に余韻を残す、すこしふしぎなお話が盛りだくさん。1話5分で読めて、いつでもどこでも楽しめるSFショートショート。
無人島に理想郷を築こうとした宗教組織が集団失踪した。そこで何が起こったのか?教団の足跡を取材中の女性フォト・ジャーナリストが発見した不可解な異物。そして彼女の周囲で起こり始める異変。数学者が、教団の教義から数学的に導き出した殺人連鎖とは何か?消滅したはずの教団は?カルト、廃墟、暗号、パラドックスなど、謎の迷宮の暗路に潜む真実を、数学論理が解き明かす、本格論理ミステリ。
中堅ミステリ作家・左創作は、文章からそれを書いた人間をプロファイルする文章探偵である。彼は、審査を務める新人賞に応募された作品の中に、自分が講師をしている創作講座の生徒のものらしき作品を発見する。しかしその作品内容に酷似した殺人事件が起こり、左は文章プロファイリングを開始する。真実を述べているのは誰なのか?謎が謎を呼ぶ、不可解な展開!妙手、草上仁がしかける本格ミステリ。
時はご維新、所は東京。異国文化の流入に揺れる文明開花のご時世であった。もと岡っ引きの善七は、上司の市中取締組の宮本少警部と殺人事件の捜査にあたるうちに、裏にひそむ陰謀の渦中に…。やがて事態は善七の女房のおせん、息子のステ吉、火消しのかしらのサクジ、謎のアメリカ人たます、黒人の花魁ばるばなどを巻きこんで、思わぬ方向へと展開しはじめるー架空の明治時代を舞台に、軽快な語り口がさえる奇想活劇。
日本中のサラリーマンが夢中になっているコンピュータ・ネットワーク・ゲームがある。新入社員としてスタートしてキャラクターになりきり、幾多の苦難を乗り越えて、出世の階段を昇っていくー、その名もカイシャ・クエスト。だがある日、プレイヤーの一人である平凡なサラリーマン・村田は奇妙な事に気づいた。自分がゲームの中で作った資料が、現実の会議で他人の資料となって提出されたのだ…。傑作書き下ろし長篇。
星降る夜のデートのさなか、〈星の怪物〉にいいなずけの少女をさらわれた少年ウィクルは、捜索の旅に出た。連れは勇名を馳せている女ガイドのシルヴァ。〈星の怪物〉の棲みかを求めて、ふたりは宇宙に翔びたった…。試練の旅を経るうちに、か弱いとも思えた少年は、逞しさを増していく。やがて、〈星の怪物〉が少女をつれさらう恐るべき目的が明らかになった。はたして、ウィクルはいいなずけを再び自分の腕のなかに抱くことができるのだろうか?SFファンタジィ巨篇。
接待マージャンのメンバー集めに四苦八苦している営業マンの、伝票合計がどうしても合わないOLの、パソコンから会議資料を取り出すことができない中間管理職の助けを呼ぶ声にこたえてやってくる、ドブネズミ色のスーツを着たさえない男。彼こそスーパーサラリーマン。高いビルもひとっ飛びで救いの手をさしのべるサラリーマンの味方を描く表題作ほか、短篇の名手がサラリーマンSFに挑戦する力作短篇11篇を収録。
異星植民のための移民用巨大宇宙船の空間は限られている。しかもエネルギーはつねに不足気味。市長はエネルギー効率をあげるため公園をつぶしてしまうことに決めたが…。公園の取り壊しとともに飼われているウサギのホップとステップも殺されてしまう。友だちのウサギの命を救うため、子供たちが用いた窮余の一策とはー。表題作はじめ、アシモフばりのSFミステリ「転送室の殺人」などバラエティあふれる5篇を収録。
あなたの大切なものは大丈夫?こわれたものは、おまかせください。割れた壼、燃えた紙、友人関係、ふたりのきずな…。何でも直してさしあげます。気づいたあなたは、もう大丈夫?ファンタジックでミステリアスな6つの物語。
傘だけのキノコのような形をして黄金色の柔毛に覆われたスロウリイには、目も鼻も耳もない。だがひと月にわずか1センチかそこら南のほうに這い進むスロウリイにこの星の子供たちは願い事をかなえる力があると信じていた。そのスロウリイの一匹が高速道路のために撤去されようとしている。撤去されたスロウリイは一匹たりとも生存していないのだ…。異星の生物を救おうとする少女とその祖母を描く表題作他、6篇を収録。
舞台の上では白熱したアドリブが繰り広げられていた。リード・トーカーの駄洒落にアンサラーが駄洒落をもって応える。まさに超絶技巧だ。歴史に残る名セッションだ。そして、テツはメグとお喋りをしたいと思ったー。高度なテクノロジー社会で、他人と接触することを忌み嫌う人々の間では、お喋りはアートと化していた。だが一組のカップルがお喋りにめざめ人間らしい感情を取り戻した時…。表題作を含む書き下ろし短篇集。
幸運勘定管理コンピュータによる幸運再分配システムが人々の幸運を支配している社会。すべての人々のラッキー・カウントは、それぞれのラッキー・カードに表示されている。-先週まで、おれの幸運勘定は人並みだった。だが、思わぬ会社の倒産、そして、恋人との別離、新しい恋人とのカジノでのギャンブルと運命は急転回し、ラッキー・カードはまさしく運命を支配するカードとなった…。ラッキー・カードに運命を翻弄される男の悲劇を描く表題作ほか、甲冑を身にまとった異星種族の定めを描くデビュー作「割れた甲冑」等、多彩な短篇を収録。
人類初の恒星間宇宙船〈ディオゲネス〉は片道5万光年の旅に出た。だが、人類の壮挙ともいうべきこの旅の出発式は、驚くほど小規模なものだった。人々はすでに宇宙開拓への意欲を失っていた。フロンティア・スピリットにみちあふれ、選び抜かれた先鋭たち、とはいいがたいクルー6名が搭乗した〈ディオゲネス〉-しかし、それを見守っていたのは人類だけではなかった。異星生命体・見張り(ウォッチャー)もまた、人類監視のため、注視しつづけるのだった。異星体とのファースト・コンタクトを描く本格SF「見張り」ほか、7篇を収録。
大昔の電力施設の廃墟を行くジャンジャンの足の下で何かが、乾いた音をたてて潰れた。それは、有機/無機混合系生物ー通常、“人間”と呼ばれる、ジャンジャンの種族のプラスティックのしゃれこうべだった。だが、ジャンジャンがこの場所に足を踏み入れた目的は、伝説の有機系生物の存在の証拠を求めてなのだった…人類滅亡後に地球の支配者となった種族を描く表題作をはじめ、タイムカプセルに詰め込んだ自社製品の効用を見るため、タイムマシンで未来へ行く男の話「タイムカプセル」など、1988年星雲賞受賞作家が描く傑作SF短篇集。
「ロボットは人を傷つけてはならないし不作為によって、人を傷つける結果を招来してはならない」-この傷害禁止条項のため、人を傷つけてしまう可能性の高い営業用ロボットの実用化は成功しなかった。営業行為には、得あれば損あり笑う者もいれば泣く者もいる。つまり、人を傷つけてしまうことが多々あるというわけだ。ところが、実現するはずのない営業用ロボットを、ライバル会社が売り出すという。おまけにお得意先で遭遇したそのロボットは、なかなか手強い営業能力を発揮した…アシモフのロボット三原則に挑む問題作を含む傑作短篇集。
宇宙飛行時における最大の問題はートイレ。特に長期飛行の場合は大問題だ。しかし、わが森田衛生設備株式会社が誇る最新式無重力トイレがあれば、そんな悩みは解消。無重力でも快適な生活が送れるはず、なのだが…。このわが社自慢の製品にクレームをつけてきた客がいる。どうやらセンサーの調整ミスみたいなのだが、大変なことになっているらしい。ヴィデオフォンの向こう側にいる不定期貨物船オーナーの罵詈雑言がその程度を示していた…無重力トイレをめぐる大騒動を描く「無重力でも快適」他、5篇を収めるSF短篇集。
不治の病いの治療法を求めて、13世紀間という長い冷凍睡眠から目醒めた男が直面したのは驚異的な住宅難。地球のあらゆる地域をおおいつくした人類は、タイム・マシンを使って、ひとつの土地を時間単位で住みわけるまでになっていたが…。表題作「時間不動産」をはじめ、ヴィデオ・テープのダビングのように、あらゆる物質を、録物デッキでダビングして複製品をつくりだしてしまう「ダ・ビ・ン・グ」、煙草を喫わない人間が差別される世界の、煙草が喫えない男の悲劇「嫌煙権」など、SF短篇の魅力をあますところなく伝える書き下ろし短篇集。