著者 : 蝉谷めぐ実
化け者手本化け者手本
ときは文政、ところは江戸。心優しき鳥屋の藤九郎と、稀代の女形だった元役者の魚之助のもとに、中村座の座元から事件の話が持ち込まれた。芝居が終ねたあと、首の骨がぽっきり折られ、両耳から棒が突き出た屍体が、客席に転がっていたという。これは何かの見立て殺しか。演目は『仮名手本忠臣蔵』。死人が出るのはこれで二人目。真相解明に乗り出したふたりだったが、芸に、恋に、義に、忠に生きる人の姿が、彼らの心を揺さぶってー『化け者心中』『おんなの女房』で話題をさらった新鋭が放つ、極上上吉のエンタメ時代小説!
おんなの女房おんなの女房
ときは文政、ところは江戸。武家の娘・志乃は、歌舞伎を知らないままに役者のもとへ嫁ぐ。夫となった喜多村燕弥は、江戸三座のひとつ、森田座で評判の女形。家でも女としてふるまう、女よりも美しい燕弥を前に、志乃は尻を落ち着ける場所がわからない。私はなぜこの人に求められたのかー。芝居にすべてを注ぐ燕弥の隣で、志乃はわが身の、そして燕弥との生き方に思いをめぐらす。女房とは、女とは、己とはいったい何なのか。いびつな夫婦の、唯一無二の恋物語が幕を開ける。
化け者心中化け者心中
その所業、人か鬼かー時は文政、所は江戸。当代一の人気を誇る中村座の座元から、鬼探しの依頼を受け、心優しい鳥屋の藤九郎は、かつて一世を風靡した稀代の女形・魚之助とともに真相解明に乗り出す。しかし芸に心血を注ぐ“傾奇者”たちの凄まじい執念を目の当たりにするうち、藤九郎は、人と鬼を隔てるもの、さらには足を失い失意の底で生きる魚之助の業に深く思いを致すことになり…。善悪、愛憎、男女、美醜、虚実、今昔ーすべての境を溶かしこんだ狂おしくも愛おしい異形たちの相克。第11回小説野性時代新人賞受賞作。
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