著者 : 西のぼる
評定所を震撼させる一大事が出来。蔵前の札差衆の訴状は、旗本と御家人に数年先の扶持米まで担保にした借金を重ねられ、堪りかねて手を引きたいとのことだった。この事態を収めたのが、江戸の商業界に君臨する大坂屋茂十郎。大きな野望を抱く茂十郎は、貧窮にあえぐ青年旗本に目を付けた。茂十郎の誘いに乗った青年旗本の許されざる行動はやがて目付筋の監視を招き…。
八代将軍・吉宗が設置した目安箱に前代未聞の建白書が入っていた。幕府の農政に関するもので、見方によれば吉宗公を批判するものともとれ、幕閣は即刻処罰を訴えるが、上様から目付方に諮問があった。十人の目付も侃々諤々、意見の一致を見ず、居並ぶ老中・若年寄を前に十人それぞれが意見を述べることに…。己が信ずるところを語る、目付の真骨頂がここに。
任地の上州で代官の権限を私し、年貢米を差し置いて領民たちに増産させた絹織物の売り上げを献上させ、私腹を肥やしたー。折しも新任の留役組頭の“策謀”に揺れる評定所に送られてきた代官は、新任組頭と苦闘中の古参組頭の“恩人”だった。“罠”だ。謹厳実直で名を馳せた“恩人”を救え…。元留役の結城峰太郎と次男坊の小次郎、目付・遠山景晋の息子金四郎は上州へ。
長崎奉行からの出島のオランダ商館長にキリシタンの疑いありとの報を受け、目付・稲葉徹太郎が赴く。また商館長の蔵から盗難があったことも判明し、稲葉が探索。そんな折、北九州沿岸に唐船出没との報せに、目付筆頭の妹尾十左衛門が急遽赴く。敵は大砲を備えた巨船群との報もあり、近隣の藩も及び腰だった。一方、江戸では目付を騙る者たちの悪行が横行し…。
田沼意次の失脚後、老中首座となった松平定信は幕政改革に着手。一方で裏門切手番頭・高槻宗一郎は、己が信じる士道を貫くため、裏の上役であった松平信明と袂を分かっていた…。焦燥と煩悶を朋える日々の中で、宗一郎は陣笠の刺客に襲われていた男ー最上徳内を助ける。その身柄と蝦夷地を巡り、陰々たる闘諍の幕が上がる!
若き旗本・高槻宗一郎には、表裏二つの顔がある。表の顔は、大奥へ至る裏門を護る切手番頭。そして裏の顔は、松平伊豆守信明の私的な密偵ー。時は天明。幕政は田沼派と反田沼派の抗争で混迷を深めていた。争いの渦の中で翻弄される宗一郎は、十代将軍・家治に、思いがけない奇妙な拝謁を賜る。しかしこの出会いが、新たな波乱を巻き起こす!
裏門切手番頭ーそれは、江戸城大奥へと通じる裏門を警護する御役の名称である。切手番頭を務める若き旗本・高槻宗一郎は、二階堂平法を操る秘剣遣いであり、松平伊豆守信明の密偵でもあった。幕閣の裏を探る宗一郎は、老中・田沼意次や白河藩主・松平定信と出会い、権謀の深淵で己が士道と正義を貫かんとするのだが…。
織田信長の岐阜城下にふらりと現れた男。真っ赤な袖無羽織に二尺の大鉄扇、日本一と書いた旗を従者に持たせたその男こそ紀州雑賀党の若き頭目、雑賀孫市。無類の女好きの彼が信長の妹を見初めて……痛快長編。
木下藤吉郎に請われ、織田勢に荷担した孫市だったが、「信長にだまされた」と飛び出し、なんと信長最大の敵・石山本願寺の侍大将を引き受ける。信長に「尻啖わせ」、戦国を駆け抜けた快男児を活写する痛快長編。