著者 : 西尾潤
想い人が行方知れずとなり、さらに母を亡くして打ちひしがれていた祭実理科。「運命の日がくるのー」生前、母の八重子は一人の青年と出会ってからそう口にするようになっていた。その青年こそ、実理科が会いたいと焦がれていた啓太だった。母の言葉の意味を知るべく啓太を捜す旅に出た実理科は、大阪、福岡、沖縄と啓太の足跡を辿るうち彼の隠された過去を知ることになる。“特別な力”を持って生まれた者は残酷な宿命に抗って、明日を変えられるか?『愚か者の身分』『マルチの子』大藪春彦新人賞作家が描くチェイシング・ロードノベル。
高齢期のパート職員が必死に働く坂田パーキングエリア。年金も医療保険もない梨元ちとせも、引きこもりの息子と暮らす古田中栄も、老骨に鞭打って働き続けるしかない。駐車場には、猫と暮らす老人、子連れのシングルマザー、認知症の母を介護する男などが行き場を失い彷徨っていた。ある日、死亡した元夫の保険金が入るかもしれないと、ちとせに連絡が入り期待をするが…。『愚か者の身分』で大藪春彦新人賞を受賞した著者が描く、車上生活者たちの絶望と、晩年を切々と生きる老女たちのシスターフッド。
賢い姉、愛らしい妹に比べて自分には何もない。夢を持てず、鹿水真瑠子は毎日をなんとなく過ごしていた。そんなある日、バイト先の掲示板で不思議な貼り紙を目にする。「磁力と健康セミナー・無料開催」。それは地獄への扉だったー。認めてほしい。ただその一心で始めただけなのに、どうしてこんなことになってしまったのだろう。マルチ商法にハマった女性の“乱高下人生”をリアルに描く、ノンストップサスペンス!
身寄りなし。写真付きIDなし。金なし。そんな優良人物をSNSを駆使して探し出すのがマモルの仕事だ。狙うは戸籍。女性を装い言葉巧みに相手の個人情報を引き出して、売買が成立すれば報酬をもらえる。ある日、マモルは上司から不可解な指示を受ける。タクヤと距離を置け。自分にこの仕事を紹介してくれた先輩に、なにが起きたのか。翌日、タクヤの部屋の掃除を命じられたマモルが見たのは、おびただしい数の血痕だった。もう、タクヤはこの世にいない。悲しみにくれるマモルに一通のメールが届いた。それは、タクヤからのメッセージだったー。罪を犯してでも生まれ変わりたいー戸籍ビジネスの末端で蠢く半グレたちを描いた新時代のクライム群像劇!第2回大藪春彦新人賞受賞作。