小説むすび | 著者 : 西村ツチカ

著者 : 西村ツチカ

ルート29ルート29

人は生まれる前、どこから来て、 生まれてからどこまで行って、 死んだらどこへ帰っていくのだろう。 その細長いルートを、私は誰と一緒に歩くだろう。 世代をこえて胸に響くファンタジーノベルの傑作、誕生! ーー 鳥取で清掃員として働くのり子は、ある日、仕事先の精神病棟で出会った患者から、娘を連れてきてほしいと幼い少女が写る一枚の写真を手渡される。 ひとり姫路へと向かったのり子は、写真を頼りにその少女=ハルと出会う。 ハルは不意に出会ったのり子に「トンボ」とあだ名をつけ、そこからトンボとハル、ふたりの道行がはじまる。 姫路から鳥取へ。 国道29号線という一本の道を辿りながら、ふたりが出会う不思議なすべて。 凸凹なふたりの冒険が行きついた先に見える景色は──。 ーー 「詩」と「映画」から生まれた、心に小さなあかりを灯す物語。 ■ □ ■ 映画『ルート29』 ■ □ ■ 2024年11月8日 全国公開 出演  綾瀬はるか 大沢一菜  伊佐山ひろ子 高良健吾 原田琥之佑 大西力 松浦伸也  河井青葉 渡辺美佐子/市川実日子 監督・脚本 森井勇佑(『こちらあみ子』) 主題歌・音楽 Bialystocks「Mirror」(IRORI Records / PONY CANYON) 原作 中尾太一『ルート29、解放』(書肆子午線)

火守火守

人はそれぞれの星を持っている。病気の少女のため、地の果てに棲む火守の許を訪れたサシャは、火守の老人と共に少女の星を探す過酷な旅に出るーー。世界的SF作家が放つ、心に沁みるハートウォーミングストーリー。 (本文より)サシャは東の孤島に立っていた。彼をこの世界の果てに放り出した帆船が、海と空の境界線に消えていく。最東端の島は、海に露出した錆さびた鉄片のようだった。周囲には命の気配すらない。  サシャは島の奥に向かって歩き出した。何日も船酔いに苦しみ、いまだに足下がおぼつかなかったが、小さな島は中心に辿たどり着くのもすぐだった。低い丘に、彼を見つめる怪しい目のような黒い穴が開いている。穴の周りには黒い石炭の層があって、ここが炭坑であることを示していた。坑道の側の開けた場所には石窯がそびえ立ち、見たこともないほど大きな鉄鍋が載せられている。ひっくり返せば、サシャが今まで見た中で一番大きな屋根にもなりそうだ。  といっても、サシャはこれまで遠出をしたことがなかった。大きな家を目したことだってない。ヒオリと恋に落ちたサシャにとって、大事なのは世界を見ることではなかった。だけど、彼は意を決し、彼女のために世界の最果てまで旅をしてきた。  石窯の火は消え、巨大な鉄鍋から独特の油臭いにおいが立ち上り、辺りに漂っている。 火守 訳者あとがき プロフィール

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