著者 : 谷津矢車
「貴様はどうも面白うないぞ!」生真面目な池田恒興は、不満げな主君・織田信長から秘伝書を渡される。そこには、戦や政において彼が感得したことが記されていた。本能寺の変にて信長亡き後、喪失感にさいなまれる恒興。なぜなら、乳兄弟でもあり、最も古い家臣の一人として彼の背中だけを見つめてきたのだ。遺された秘伝書は、苦境の度に恒興の危難を払ってくれる。長久手の戦いの絶体絶命の窮地にも、それが救ってくれると信じていたが…。時代小説の若き新星が、戦国の世のトップに仕えた男の苦悩と葛藤を描く、書下ろし長編!
許嫁・お里の借金を返すため盗みに入り、所払にあった次郎吉。真人間に戻ろうと決意し四年ぶりに江戸に帰るも、職にはつけず、お里から祝言の予定を告げられる。相手は金儲けのためなら殺しも厭わない呉服屋の呉兵衛。生活に困窮し呉兵衛への恨みも募らせていた次郎吉は、町の仁医・七兵衛の裏稼業を手伝うことに。それをスキャンダル命の瓦版師・亀蔵に嗅ぎつけられ、さらに、お里の真の思惑も明らかになってきて…。
剣を握ったのは遠い過去、今では書物を手放さず、暇さえあれば読書にふける柳生十兵衛は、一応、柳生家の御曹司。以前は徳川家光の小姓も務めていた。だが家光の勘気を蒙り、目下、小田原にて謹慎の身。これ幸いと読書にうつつを抜かす十兵衛だったが小田原城主阿部備中守から城下の不逞浪人の調査を依頼される。十兵衛は、筋骨隆々の従者一兵衛と探索を開始するが…。読書家・柳生十兵衛が小田原に巣くう“魔”に挑む!
吉田松陰によって、出会う前からおたがいの存在を意識したふたり。しかしー小田村伊之助の祝言に現われたのは、文の姉、壽だった。そして、松陰が文の相手に選んだのは、弟子の久坂玄瑞だった。それぞれの気持ちとは裏腹に、義理の兄妹となったふたりは、松陰の死、久坂玄瑞の死を乗り越え、再び惹かれあっていくー幕末〜明治の長州で、時代に翻弄されながらも真摯に生き抜いた小田村伊之助と杉文。幕末維新を見守り続けたふたりの愛の物語。
自分の絵を描きたいー手本を写すだけの絵に疑問を感じていた狩野源四郎。しかし、足利義藤(義輝)の「日輪を描いてみせよ」との依頼から己の道がみえはじめる。進む先に待つのは、新たなる狩野の創造か、それとも破壊かー松永弾正、織田信長ら時の権力者に愛された、安土桃山時代を代表する天才絵師・狩野永徳。彼が「洛中洛外図屏風」を完成させるまでの苦悩と成長を描いた話題作を文庫化。
『狩野を越えろ』-亡き祖父の言葉通り、自らの画道を突き進む狩野源四郎に、足利義輝から『予の天下を描いてこい』との依頼がー「洛中洛外図屏風」を手掛ける源四郎の苦悩に迫る下巻。織田軍と対峙する松永弾正のもとに一隻の屏風が送られてくる。描いた絵師の名は狩野永徳ー。『洛中洛外画狂伝』の後日譚である書き下ろし短編『白屏風と平蜘蛛』を収録。
江戸で浪人となった青年・夏島丈衛門は、ひょんなことから“喧嘩最強”の経営指南所「唯力舎」に入門することになる。皆がおびえる腕っ節と抜群の頭脳を持つ若き女師範・たえ、あらゆる店の帳簿を一目で読み解く喜助、天才的な商売のアイデアを捻り出す冬、そして人の嘘は必ず見抜く平三郎たちとともに、「犬の接待」から「かたむいた大店の建て直し」まで、唯力舎に持ち込まれる難題を独自の“最善手”で解決していく。