著者 : 郡順史
「新之助、進吾を討ち果たし、深雪を連れ戻して参れ」と殿の厳命が降る。新之助と進吾は同じ小姓組で無二の親友だ。深雪は先君の庶子。その深雪と欠落ちして殿の逆鱗に触れたのだ。上意は絶対である。進吾を討たねば帰藩は許されない。新之助は婚約者と別れ旅に出た。三年目、独り身に落ちぶれた進吾を発見するが…(表題作)。武士道の真髄を活写。他八編。
なんとしても家康に逢い、秀吉討伐に立たねばならぬ。それには敵陣の中、越中から真冬の北アルプスを越えて行かねばならない。成政は必死の形相の従臣たちに向かってこう言い放った。「佐々の存亡はこの一事にかかっている。皆の生命をわしにくれ」とー。信長への忠義の念から、秀吉の天下奪取に抵抗し続けた佐々成政。武人としての誠実さに殉じた男の生涯を描く書き下ろし歴史小説。
「葉隠」とはー“武士道というは死ぬことと見つけたり…”の言葉に代表されるごとく、尚武の思想を説いた哲学的武士道書『葉書聞書』のことである。肥前鍋島藩の穏士山本常朝の口述を同藩の士田陳基が聞き書きし、十一巻の書物にまとめて享保元年(1716)に完成した。別名「葉隠論語」とも「鍋島論語」とも呼ばれた。著者はその戦国以来の武士の死生の覚悟を説示した『葉隠聞書』二千余頃目の中から、特に8頃目を選び抜いて、そこに自らの人生体験などを折り込みつつ、すさまじい武士の日常・生死を語り、会心の士道小説とした。-武士道そのもの、そのもののために生きる士を描く“葉穏士魂”凄絶の物語全八話!
不幸は突然、襲ってきた。藩内で陽明学を講ずる門出転に幕府から苛酷な罪科が下されたのである。「切腹」。この学問は国禁とされていた。愛弟子・和三郎の動揺は激しかった。「師の大恩に報いるには自ら介錯人を務めること」と申し出た。師を送る日が迫る。和三郎は“失敗”の夢にうなされた。さて当日は…?。武士道小説の名手が織りなす美しくも悲しい9編の宿命絵巻。
足利幕府勘定台所目付の貝塚源太夫と木戸鹿九郎の両人に野狩りの混乱のうちに討たれた郷士重右衛門の子藤次は、いまだ14歳の少年であったが、父の仇を討つべく独り剣を学ぶ。彼の師となった老僧こそ、鬼一流6代室行雲為家であった。5年後、鬼一流の秘太刀“乱剣”の極意をさずけられ、7代祇園源宗春に成長した藤次は、いよいよ京の都へと上った。伊賀の兵法者伊賀崎幻雲の娘春海と知り合った藤次は、卑怯な神山左近らの手槍の襲撃も伊賀兵法“畳返し”の妙技でこれをしりぞけ、幻雲に会うべく春海を同道して伊賀国へ。痛快な面白さを発揮する著者得意の剣豪小説。