著者 : 野沢直子
「いくつになっていたって、私には未来がある」 スーパーのレジで働く立花カオル。五十五歳になった今、瞼はたるんで足は象のようにむくみ、転がるように醜くなった。何を見聞きしても感情の針が動くことはなく、すべてのものが灰色に見えていた。寝るためだけの六畳間の自宅とパート先を往復するだけの、ひたすら「孤独」で味気ない毎日。家に帰るといつも「灰色のハイエナ」に見られているような幻影に悩まされていた。しかし、ある偶然の再会によって、カオルは新たな生きる希望を抱きはじめ……。 灰色の世界 十四歳 予感 奇跡 色 半月の夜 道
破天荒に生きた父に捧ぐ! 「金スマ」2時間スペシャルで大反響を呼んだ父と娘の感涙の物語 野沢直子さんの父親ほど破天荒で魅力溢れる人物がほかにいるでしょうか。 まったく奇抜なアイディアで事業を成功させたり、完全に失敗したりを繰り返し、愛人 をあちらこちらに持つ父。しかし家族のことは大切にしていました。その父が死に、通帳 には千円の残高しかなかったのでした。 父には一生背負わなければならなかったある経験がありました。それらの秘密や、家族 の大切な記憶が徐々にひもとかれていきます。野沢さんの祖父は、直木賞候補と目された 作家、陸直次郎。一家を支える三味線の師匠である祖母と、夫を信じ、愛人との駆け落ち も受け入れる母。叔父に声優の野沢那智氏。 事業を手掛けては失敗する父と、成功を信じて疑わない母。その間で、野沢さんは懸 命に「お笑いの道」を目指します。ところが母親の死後、韓国人の隠し子が現れ、最後の 章では、誰もが仰天するあらたな出会いが待っています。 「文藝芸人」(文春ムック)掲載時に、読者から「リリー・フランキー『東京タワー』 に匹敵する親子愛の名作」と絶賛された作品に、格闘家デビューした長女、野沢・真珠オ ークライヤーと激しく争った子育ての日々などを、大幅に加筆しました。懸命に生きる野 沢家の人々の姿は、可笑しくてせつなくていとおしい。全編笑いに包まれながら、涙をな くして読むことができない本書は、小説を越えた小説と言えるでしょう。野沢直子さんは やはり並の人間ではなかった!