著者 : 野里征彦
わが心、高原にありわが心、高原にあり
「ほれ、佳乃も来い。皆で踊んべやー」耕さんが踊りに加わりながら手招きをすると、佳乃さんも来て加わった。「十五夜のー、月は出べし山を見上げで、それ踊りゃれー、吾が連れづれー」「はあー、ダダスコダー、ダダスコダー、ダンダンダダスコ、ダダスコダーダー」四人は輪になって踊った。月の光に照らされた高原は、影踏みができそうなほど明るかった。(「わが心、高原にあり」より)。種山ヶ原に星が降る。ダダスコダー、ダダスコダーと星が降る。心の奥がひらいてゆく。じわりじわりとひらいてゆく。震災後文学の異彩を放つ『わが心、高原にあり』。第23回長塚節文学賞短篇部門大賞『鱒』を併載。
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