著者 : 阿佐田哲也
「博打うち」とは本当に因果な商売だ。プロである以上は勝たねばならないが、勝てば勝つほど、客の足は遠のき、挙げ句のはては飯の食いあげだ。この難問が解決できない以上、「博打うち」とは、ギャンブルにのめりこんだ多くの男達の幻想ともいえるかもしれない。麻雀必殺技、“二の二の天和”に骨身を削るイカサマ師を描く「天和くずれ」、ギャングバー経営の女衒の達、ドサ健と寺の息子との息づまる秘技の応酬を描く「天国と地獄」等11編を収録。
終戦間もない混乱の東京。十六歳で雀ゴロとして生きる“私”は、一つ年上のボッチと出会う。一匹狼ながら人恋しい妙な感情に見舞われた“私”は、ボッチを相棒にするべく麻雀の“通し”を仕込むが、うまくいかない。やがて、ひとり地方へ流れていくが…(『雀師流転』)。未完ながらも、戦後の匂いを濃く残す“もうひとつの『麻雀放浪記』”。長編小説に加え、著者が出会ったギャンブルの“職人”たちや、勝負の思い出を綴った文庫未収録エッセイ『麻雀師渡世』から精選した二十三編も併載。
小学生同士で“結婚”したハルとカン子。大きくなってから再会するも、それぞれ究極の悪の道をめざしていたー。詐欺教育塾のガーピー先生、暴力団のスットン親分、資産家のプクプク爺さん、女実業家にして大金持ちのチン夫人…。ひと癖もふた癖もある面々を巻き込んで繰り広げられる“三億円争奪戦”!食うか食われるかの騙し合い、惚れた腫れたの逃亡劇。さまざまな思惑をはらんで、舞台は海をも越える。果たして、生来のアウトサイダー、ハルの行き着く先は?そして大金のゆくえは?阿佐田文学ファン必携の長編ユーモア・ピカレスクロマン。
雀プロ、成金、僧侶、医者、愛人、弁護士、学生に警察官…。風俗営業が数多ひしめくピンクゾーンに、今夜もギャンブル好きが集まってくる。東風戦、ワレ目あり、動くカネは数億円!?命の運より博打運。カタギだってヤクザだって、いやがおうにも血が騒ぐ!殺人前科はあるものの、物腰柔らかで男前の天才勝負師「オレンプ」。そして、ギャンブルを愛してやまない面々が、痺れるような勝負の世界特有の、興奮の坩堝に引き込まれていく。阿佐田哲也のギャンブルセオリー満載の、“一話完結形”連作長編麻雀小説。
競輪に惚れ込んで、生きる道を変えた元バンドマン・ロッカ。非合法の世界で天下を取りたいと願う非情なノミ屋・和合。元省庁の役人・立花。出所間もない大物老ギャンブラー・鉄五郎ー。“フリーランサー”として生きる勝負師たちの壮絶な人生模様を、独特の筆致で描いた阿佐田哲也晩年の名作、長編ギャンブルロマン。ルーレット、競輪、賭けゴルフ、チンチロリン、オートレース、手ホンビキ、闘犬、ポーカー、さらには“誰が死ぬか”まで。あらゆるギャンブルが登場する。何をおいても賭け続ける男たちの、果てしなき戦いの譜。
長年にわたる麻雀の打ち過ぎのためか、肘が上がらなくなり、いかさまが出来なくなった私こと「坊や哲」の前にあらわれた、ドサ健、出目徳、タンクロウらとも全く違った新しいタイプの麻雀打ち、鎌ちゃん。闇の地下組織TS会から高利の金を借り、窮地に追いやられた私に生来の博打打ちの魂が鎌首をもたげ…。
戦後も安定期に入った。私こと「坊や哲」は唐辛子中毒で身体を壊し麻雀から足を洗って勤め人となった。ある日、会社の仔分がおそろしく派手な毛皮の半オーバーに鍔の広いテンガロンハットをかぶった一人の男を連れてきた。ドサ健だった。そして私は、再び麻雀の世界に身を投じることになった。感動の完結篇。
雀ゴロの英さんは、一本気なイカサマ師。だけど最近はどこの麻雀クラブも油断しなくなって、商売あがったり。そこへ謎の美女が現れて「麻雀を教えて」とせがむ。下心をこらえて彼女と組んだ英さんは、大勝負に臨むが…。表題作「天和をつくれ」ほか、文庫初収録の短篇計八作。いずれも、ギャンブルが題材ながら、描かれているのは、勝負に生きる“人間”たちの哀楽にみちた人間模様。昭和の匂いを満喫できる一冊。
終戦直後、焼け野原の上野のドヤ街で「ドサ健」と出会い、一気に博打にのめりこんだ主人公の「坊や哲」。チンチロリンや麻雀の技、いかさまの腕を磨いた哲が「出目徳」や「女衒の達」「上州虎」ら仕事師と渡り合い、生き残りをかけて激闘する阿佐田哲也のピカレスクロマンの最高傑作。
ヒロポン中毒となり、やさぐれ生活を送っていた坊や哲は、代打ち麻雀でいかさまを見破られた。その後、生臭坊主クソ丸、ドテ子とともに東京から大阪へ移ったが、そこで出会ったのがブウ麻雀だった。京都の博打寺を舞台に関西のブウの鬼たち相手に激闘を繰り広げる阿佐田哲也の傑作ピカレスクロマン第二弾。
あの懐しい坊や哲、ドサ健が帰って来た、しかもより多彩でより猛烈なキャラクターのメンメンを引き連れてー。天才的なカンであらゆる博打に勝ち続ける街の女。絶対放銃しないが故に緊張に耐えきれずクスリに溺れる芸妓。苛烈な勝負の連続を通して人生の闘いを鮮やかに描きあげた阿佐田哲也会心の珠玉短篇集。他に色川武大「ひとり博打」を併録。
終戦直後の上野不忍池付近、博打にのめりこんでいく”坊や哲”。博打の魔性に憑かれ、技と駆け引きを駆使して闘い続ける男たちの飽くなき執念を描いた戦後大衆文学最大の収穫!!