著者 : 阿木冬子
父のアーメロン伯爵が旅先で再婚!その報せに、レンシアとアリスの姉妹は驚いた。継母の身勝手のせいで、父と約束したフランスの古城巡りも一旦は諦めざるをえなくなる。だが、妹をがっかりさせたくなかったレンシアは、若い未亡人を装いアリスと共に予定通り旅立った。そして、ロワール地方へ向かう途中でモンリシャール公爵と出会う。かれは姉妹へ城への滞在をすすめ、ショモン城のガイド役を申し出たが…。
退役したメルヴァリー侯爵は、愛人達の裏切りなどで、ロンドンの生活に幻滅してしまい、失意のまま故郷の館へと向かう。その途中、馬場の事故に遭遇するが、その一台に乗っていたクリスティーナという美少女は、侯爵の領地内で乳母と二人きりで暮らしていた。だが、既に両親は亡く、強引な男に迫られて怯えながら過ごす毎日らしい。そんな事情を知った侯爵は、付添い役を捜し、自分の館に引き取ろうと決心するが…。
燃えつきようとするわが家を、アリーナは弟のゲリーと共に呆然と見つめていた。召使いの不始末による火災だった。いまや姉弟には、隣のメルドン・ホール以外頼るあてはない。しかし、地主のメルドン侯爵の評判は、かんばしいものではなかった。二人が意を決してメルドン・ホールへ行ってみると、長い間不在のはずだった、メルドン侯爵本人がいた。
社交界にデビューしたばかりのヴァレリアに、フランス人公爵との縁談がもちあがった。ヴァレリアはかれのシャトーを訪れることになり、兄のアントニーとともに南フランスへ向かう。ところが、アントニーは妹を強引に説きふせ見合いの前に、評判のカンカン見物をしようとピアリッツに立ち寄った。変装をして出かけたダンスホールで、ヴァレリアはレイモン・サヴァンと名のる伯爵に出会う。
父の死後、叔母の邸で暮していたツェリーナは、突然ロシア行きを言い渡される。後見人の叔母には逆らえず、しかたなくロシア行きの船に乗ったツェリーナ。そんなツェリーナになれなれしく近づいてくる男がいた。身の危険を感じたツェリーナは、とっさに同船していたシャルノック卿に助けを求めた。
父を亡くして憔悴しきっていたアンセラは、亡き父の友人フェリックス医師の勧めにしたがって南フランスへ向かった。ロシアの貴族フェオドローワ・セボロフスキー妃が、話相手になる看護婦を求めているという。だが、到着する早々驚くことばかり-。アンセラは散歩の途中で、社交界に渦巻く、唾棄すべき陰謀を耳にしてしまったのだ。その夜、モンテカルロのカジノを訪れたことから、アンセラはその渦の潮流に呑み込まれていく。
旅の途中、盗賊の襲撃に遭いイングランドへ帰るすべを失ったアテーリア。とりあえず身を寄せた教会で、アテーリアはある伯爵夫人に出会った。夫人は旅費はだすから、娘をヨークシャーにいる父親のもとへ送り届けてほしいという。願ってもない話に、アテーリアはさっそく少女と旅立つが…。
フランスに滞在中のイギリス人を拘禁せよ-。戦争が再開されると、ナポレオンは命令を下した。ちょうどパリを訪れていたヴェルニータと両親は帰国もかなわず、官憲の目を逃れて隠れるほかなかった。しかも、父が急病で亡くなってからは、お針子をして得たわずかな収入で、やっと暮らす毎日。このままでは飢え死にしてしまう…。意を決したヴェルニータは、つくった服を高く買ってもらおうと注文主であるナポレオンの妹ポーリーンのもとに出向く。そこで彼女は、ひとりのエレガントな紳士に出会った…。
双子の兄ナイジェルとともに誕生日を迎え、フレイムは無邪気にはしゃいでいた。しかし、兄妹の冷酷な母親は、この純真無垢で世間知らずの娘に、三倍以上も年の離れた俗悪な男との結婚を企てていたのだ。追いつめられたフレイムは、ナイジェルの助けを得て、インドへの逃亡を決意する。兄の名を借り、少年に姿を変えて、フレイムはインドへと向かう船に乗り込んだ。ところが、一人部屋だとばかり思い込んでいた船室には、予期せぬ相客が…。フレイムの戸惑いを乗せて船は滑り出していく。
亡くなった母の代わりをするようになってから10年。牧師館の長女ダフネは、牧師である父、5人の弟妹たちと貧しいが幸せに満ちた生活を送っていた。そんなある日のこと、ダフネはひとまわり以上も年上の鉱山家、ジョン・カーに求婚される。妻になって身の回りの世話をしてくれるならば、その代わりに貧しい父と弟妹たちを援助する、というのだ。これはゲームだわ。ダフネは、そう考えて結婚を決意するのだが…。恋の意味さえ知らないダフネの、人生のゲームが始まった。
人気俳優ダミアンのマネジャーのリンは仕事を離れてもダミアンに夢中だった。しかしダミアンは、リンのことを事務所の備品ほどにしか考えていない。そこで、リンは子供の頃から兄のように慕っているアダムに相談すると、アダムはある名案を思いついた。それは、アダムがリンの恋人役になり、ダミアンにやきもちをやかせるというものだった。
メアリーは、州立大学の図書館に勤めるため故郷ルイジアナに帰ってきた。出迎えたのは、母と祖母、そして幼なじみのキップだった。メアリーにとって、キップは兄のような存在だった。そう、7年前のある夜、抱きしめられるまでは…。
タレント・エージェントのローリーは、こともあろうに、テニスコートの男子用更衣室のロッカーに身を潜めていた。マスコミ嫌いで知られる若手No.1プレーヤー、スティーブにCM出演を承知させるためだった。やがて、スティーブの声が聞こえドアの閉まる音がした。そっとロッカーの扉を開けてみると…、日に焼けて引き締まったスティーブの背中が見えた。
コネチカットの田舎町ファーミントン。ロックンローラーのマロリーは、皆の期待するセクシーシンボルの役に嫌気がさし、静養のため、この町に引きこもったのだった。ある日、スーパーで買い物をしているとき、ふとしたことから、医者デビッドと知り合いになった。そして、彼に、自分のいる世界にはない誠実さを感じ、マロリーは、強くひかれていった。しかし、デビッドが知っているのは素顔のマロリー。マロリーは、彼に真実を打ち明けることができなかった。ところが、デビッドは、レコード屋で、マロリーのレコードを見かけてしまった。マロリーの正体を知り、デビッドは…。
ユーナは、フィレンツェの女子修道院学校を卒業し、父のいるパリに向かった。在学中は、母の遺産で生計を立てていた。が、お金も底をつき、父に手紙を書くと、モンマルトルへ呼ばれたのだった。ところが、父のアトリエに着くと、ユーナを待っていたのは、ひとりの画商だった。彼はユーナに、父ソローの死を告げた。途方に暮れるユーナ…。みかねた画商は、ユーナを、ウオルスタントン公爵に引き合わせた。女性遍歴の多い公爵は、ユーナのういういしさが信じられず、疑惑のまなざしで見つめるばかりだった。
ライターとして駆け出しのジェシーにかつての無声映画の大スター、メルセデスの伝記を書くというチャンスが巡ってきた。そかし、メルセデスが出した条件は、ハリウッドきってのセクシーシンボルであるカム・ホールダーの家のバラ園に灰をまいてくる-という奇妙なものだった。そのために彼の邸宅に忍び込んだジェシー。ところが番犬にほえたてられアボカドの木にのぼって難を逃れる始末。と、犬を呼ぶ声がした。あれが、カム・ホールダー…。ジェシーは黒髪の男をじっと見つめたままその男らしさに声も出なかった。
貴族的な端正な顔だち、とびきり美しいサファイア色の瞳。ナターシャは、目の前の客の顔を見て驚いた。なんと、少し前、ブラウスの返品に行き、その時の対応が不満でブラウスを投げつけてきた男ではないか。彼はナターシャを捜していたという。いったいなぜ?何の用があるというのだろう。しかし、勤務中では思うように訊ねることができない。結局、ナターシャは強引に閉店後に会う約束をさせられてしまうのだった。
「すべての財産を美しい妻クリサに遺す」結婚式の興奮も醒めやらぬ間に急死した夫サイラスの遺言は、クリサにとって青天の霹靂だった。男爵の父の借金の肩がわりを条件に、アメリカの大富豪サイラスと結婚したクリサだったが、父も死んだいま、クリサにとって巨万の富は無用の長物だった。故郷に帰りたい-。すべてを捨て、傷心で、イギリスに向かう船トレーヌ号に乗りこんだクリサに、思いもかけない事件が待ち構えていた。