著者 : 青羽悠
京都の大学に入学した数学好きの田辺朔。大学生活に馴染めず、漫然と授業を受け、バイトをしているうちに一回生前期は終わってしまった。後期に入り、旧文学部棟の地下、通称「キューチカ」でひっそりと営業されているバーのマスター夷川と出会い、朔の大学生活は一変したー。まぶしくて、切ない。20代の日々。
世界の中心に聳える巨大な“木”。人々は枝の上に家を建て、各地から人が集まり、やがて国ができ、文明が生まれた。だが、他国から“木”のもとを訪れた学者は気がつく。「こんなものは本来、地球に存在しえない」この“木”はいったい何なのか?宗教の長となった少女、天文学に全てを捧げる青年、人生に絶望する配達員の男ー運命の奔流に巻き込まれた人々の苦悩と情熱が積み重なり、やがて壮大な謎が解き明かされていく。これは力ではなく、知性で世界を変えようとした人たちの、幾千年の物語。
何かを「好き」と言える人を眩しく感じる隼人、「女の子との遊びはクレーンゲームみたいなもの」と言ってみせる大地、高校時代までは、周囲から認められて自信を持っていた和弘、仲間が何に苦しんでいるのか分からず、寄り添えない自分に絶望するB-。「なりたい自分」に向かってひとり藻掻く、“大人未満”の4人の物語。
仕事も恋愛も惰性の日々を過ごしているOLの遥。ある日遥は、無名のアーティストの曲がYouTube上で「バズって」いるのを見つける。その曲にとてつもない引力を感じた遥だったが、数日後、そのアーティストの公式サイトで、「2018年10月23日、Vo.霧野十太逝去。27歳」の文字を目にする。なぜ1年も前に亡くなった無名のアーティストの曲が、今更注目を浴びているのか。霧野十太とは何者なのか。一人の天才に翻弄された六人の人生を描いた、著者渾身の青春小説。
中学三年の祐人は、いつも薫、理奈、春樹とプラネタリウムのある科学館で過ごしていた。宇宙に憧れる四人は似た夢を持ち、同じ高校に進む。だが、月日が経ち、祐人は逃げた。夢を諦めて町役場で働く彼は科学館を避け、幼馴染の三人をも避け続ける。ところが、館長の訃報を受けて三人に会うことに。そこで科学館の閉鎖を知り…。瑞々しい筆致で描かれる青春群像劇。第29回小説すばる新人賞受賞作。