著者 : 須藤明生
総合商社・東邦物産の平凡なサラリーマンの熊谷徹は、退社を覚悟で設立した“スワン・エンタープライズ”が大成功-。表向きはあくまでも人材派遣会社だが、実際は国際色豊かな才色兼備の若い女性を集め、大企業のエグゼクティブにセックス付きの愛人秘書として利用させていたのだから、儲からないはずはない。本社からの評価も高く、弱冠三十二歳で最年少取締役に抜摺されたほどだ。業績が伸びる度に、高級クラブやソープランドに通い、趣味と実益をかねた“人材確保”に努める熊谷の前途は洋々に思えたが…。
武久組の武久雄治はプロ拳法の格闘競技者。ヤクザ社会の違法無頼を嫌った雄治に六代目襲名の時がきた。それには五代目の父を完全に退け、稼業を“改革”することが条件だった。だが、違法を行なわず、任侠の真義にもとることのない武久組を望む雄治の前に、縄張りをめぐる熾烈な抗争が待ちうけていたー。死を賭した男たちの闘いを描く長篇アウトロー小説。
三枝恭子は、城南大学の3年生である。春休みを利用して、射撃部の合宿中だったが、訃報が入った。養父の吉蔵が死んだ、というのだ。故郷・秋田県阿仁に戻った恭子は、吉蔵の死に疑念を抱く。警察は熊による食害死と断定したが、名人マタギの吉蔵が熊に食われるはずがない。調べていくうちに“事故死”当時、入山していた4人のグループに不審な点が出てきた。東京に戻り、彼らの身辺調査をして、吉蔵の死は彼らの手によるものと分かる。恭子は抜群の美貌と九条流の小太刀の技を武器に、復讐の雪豹と化し、敵に迫る。
1990年8月18日。セキュリティ・コマンドーの山谷剛は、イラクのバスラに潜入した。イラク軍に捕われている英国謀報部員を救出するためだ。見事、作戦は成功したが、その代償は高くついた。山谷は、効き腕である右腕前部を失ってしまったのだ。失意の山谷は故郷の秋田県阿仁に帰り、マタギとなるべく左撃ちの訓練にあけくれているとき、昔馴染みの警察庁公安部次長の相羽から困難な事件処理をもちかけられる。事件が公になれば日本の土台が崩壊するという内容だった…。期待の大型新人の鮮烈なハードロマン。
ストリッパー専門の芸能プロ社長、佐川が失踪した。かつての恋人である佐川の妻から捜索を依頼されたプロ格闘家の二階堂猛が、まず女ぐせの悪い佐川の性格に目をつけたのは、ごく自然の成り行きだった。その結果、佐川が手をつけた踊り子たちの中で、ケイ南だけが写真などいっさいの手街りを処分して消息を断っているのが判明した。その矢先、秋田で一件の殺人事件が発生した。凶器は猟銃、所有者は佐川だった。否応なしに事件にのめり込んでいく二階堂-。彼の鉄拳と推理が暴き出すものは。書下ろし長篇ミステリー。