著者 : 高瀬素子
34歳、独身。わたしデボラ・ノットが持っているのは、熱い正義の心と、酒の密造人の娘という汚名ー弁護士のデボラは、迷宮入りとなった殺人事件の調査を知人に依頼された。自身、地方裁判所の判事に立候補し、今は激しい選挙戦の最中だが、必ず犯人を見つけてみせる…“運命は自らの手で切り開く”強く美しい心のヒロインの闘い。アメリカ探偵作家クラブ賞、アンソニー賞、アガサ賞、マカヴィティ賞、4賞独占の名作。
ボストンの情報提供会社で出世街道を歩んでいた40歳のビル・チャーマーズは、ある夏の朝、通勤途中の地下鉄で、突然下車すべき駅名も自分の会社名も、自分の名前すら分からなくなる記憶喪失に襲われる。覚えているのは「最小の時間で最大の情報を」という会社のモットーだけだった。深夜、浮浪者のように町をさまよったあげくビルは記憶を取り戻し、インターネットのチャットで“大学教授”と不倫する妻といつもEメールで語りかけてくる14歳の息子の待つわが家へ帰り着く。が、ビルの悪夢は始まったばかりだった。この日をさかいに、ビルの両手の感覚がなくなりはじめ、原因不明の麻痺はさらに足から全身へと進行していった。病院はビルに無数の検査を施し、つぎつぎと新しい医者を紹介するものの、決して診断を下そうとしない。そしてついにビルは会社をクビになる。サラリーマンを襲った悪夢と悲劇をカフカ的世界を通して描いた全米図書賞候補作。
コンサートからの帰路、大学教授のイーサンはコネティカットの田舎道にある寂れたガソリン・スタンドに車を停めた。トイレを借りるため、娘は妻とともにスタンド内へ消えていく。一方、息子は車を出て、道へ歩み始めた。その瞬間、カーブを曲がってきた車が息子を襲った。氷が砕けるような音を響かせ、息子は宙へ飛ぶ。そして、路上に打ちつけられた息子の死体が、夜の道に残された。弁護士のドワイトは運転している車のスピードをあげた。助手席には、野球観戦で疲れた息子が眠っている。離婚した妻のもとへ息子を送り届ける途中、門限に間に合わせるため、近道へとハンドルをきった。カーブが終わったその瞬間、目の前に少年の姿が…。鈍い衝撃を感じながら、ドワイトはそのまま車を疾駆させた。夜に沈む道を。息子を轢き殺されたイーサンは、憎むべき犯人を追い始める。罪悪感に苛まれるドワイトは、窮地に追い込まれていく。事故がひきがねとなり、双方の家族は崩壊し、二人は平穏な日常から悲劇が待つ亀裂へ堕ちていく。やがて、互いの運命が交錯する時、物語は終局に向けて加速する。人間心理を深く抉り、全米各書評紙誌に絶賛された出色のスリラー。
プラハの街をぶらつき、観光客の娘を騙して弄ぶのを無上の楽しみとするアメリカ人青年ニックス。彼はある夜モニカという女に出会い、その魅力に取り憑かれた。ジプシーとチェコ王族の血を引きモニカへの想いはとめどなく膨れあがる。彼はモニカを執拗につけ回し、彼女の兄と称する男を殺してさらにある卑劣極まりない犯罪を企てた…“運命の女”のために転落の一途をたどる男を非情なタッチで描く、サスペンスの新収穫。
判事のデボラの前から姿を消していた男たちが突然帰郷したー彼女の過去に影を落とすアレンと、自分の土地に買収話が出たデボラの兄アダム。思いがけぬ再会にデボラは動揺する。そんなある日、地主であるアレンの叔父が殺害された。さらに数日後、第二の殺人が起き、デボラとその一族は事件の渦中に…意外性と滋味に満ちた、アガサ賞最優秀長篇賞受賞作。
写真家志望のメアリーは恋人に依頼され、ある男にロサンゼルス空港で鞄を渡した。代わりに彼女は重いスーツケースを受け取るが、その直後、渡した鞄が爆発、男は死亡した。爆破犯としてFBIと警察に追われ、スーツケースを奪おうとする二人組の男にも狙われる身となった彼女は、変装してポップアート画家のもとで暮らし始める。が、そこにも追跡者が!現代アート界を背景に描く痛快でスタイリッシュなパルプ・ノワール。
臨時の仕事で大西洋沿岸の地域にやってきた判事のデボラは、砂洲で男の射殺体を発見した。風光明媚なこの地域では、海の利権をめぐって開発業者や漁師たちが対立しており、被害者は漁師のまとめ役をしていたという。デボラは犯人を追い始めるが、やがて第二の殺人が…女性判事デボラ・ノットの人間味あふれる活躍を情感豊かに描く人気シリーズの第三弾。
判事になったデボラは激務の間をぬって、貧しい家族のために家を建てる活動に手を貸していた。だが建築現場で姪が男に乱暴され、その男が何者かに撲殺された。死体を発見したデボラは事件に巻き込まれ、さらに次々と不可解な謎が。アメリカ探偵作家クラブ賞、アンソニー賞、アガサ賞、マカヴィティ賞を受賞した話題作『密造人の娘』に続くシリーズ第二弾。