著者 : 麻野真由美
ヘイウッド卿は軍人として活躍したが戦後、領地に従者と帰還する。父の訃報により、爵位を継承したからだ。三年の不在で無人だったはずの館には美貌の少女が秘かに身を隠していた。詰問する彼に、ラリータと名のった後は後見人の叔父に息子との結婚を強制され家出をしたと、渋々ながら答えた。そして必死に同居を頼みこむ彼女の懇願に、ヘイウッド卿の決意も鈍ってしまう。目前には、父の負債や領内の困窮、荒廃した館の修復など難問ばかりだった。次第に、ラリータは貴重な存在になり金策に苦しむヘイウッド卿は慰められ無垢な彼女に魅力を感じ始めるが…。半世紀を越えて読みつがれてきたロマンス界の女王の作品の中から、傑作ばかりを集めた日本独自の新シリーズ。豪華絢爛、清純なヒストリカル・ロマンスの世界。
「ここで何をしているの?」ヴァーダの鋭い問いかけに、ホテルの部屋に忍びこんだその男は、アメリカの石油王のひとり娘を取材しにきたジャーナリストだと名のった。ヴァーダをその本人だとは気がつかないらしい。そこで、ヴァーダは令嬢の付添いだと偽って、パリを案内してもらうことにした。イギリスの公爵との愛のない結婚を勧められていたヴァーダには、つかのまの自由な日々だった。
司祭館で秘書として働くフランシスは、過酷な労働に疲れ果てついに病に倒れてしまった。司祭の甥モンターギュのとりなしも虚しく司祭館を追い出された彼女は田舎の牧場に静養に出かけたが、後を追ってきたモンターギュとの恋の行方に心は乱れていた。そんな彼女の前に現れた一人の男。近くのテザーストーンズ農場を取りしきるその男は、謎めいた眼差しで彼女を捕らえた。“テザーストーンズ”-鎖の石。忌まわしい言い伝えが残る呪われた土地で、フランシスは恋の迷路をさまよい始める。
突然の両親の死によって、メリンダは不幸のどん底に突き落とされた。叔父の家での惨い仕打ちに耐えかねた彼女は、行く当てもなくロンドンへ向かう。親切な貴婦人が一夜の宿を申し出てくれた上、莫大なお金が手に入るチャンスがある、という。そこが娼婦の家であるとは清純無垢なメリンダが知る由もなく、彼女はチャード侯爵との偽りの結婚式を挙げる羽目になる…。メリンダは今、甘く危険な人生の罠に翻弄されようとしていた。
夫に顧みられることのない、冷えきった結婚生活は、メアリー・ラティマーをすっかり変えてしまった。美しく着飾ることも、楽しく微笑むことも忘れた、魅力のない退屈な女に…。たった一人の娘マーガレットは、幼い頃から寄宿舎に入れられたままだった。やがて、夫の突然の死。なんと彼には愛人がいたのだ。あとに残されたのは、本当の愛を知らずに育った娘と、時代遅れの服をまとった抜け殻のような未亡人。しかし、それは思いもかけない新しい人生の始まりでもあった…。
私にぴったりの男性が、この地球のどこかにいるはずだわ-。広告会社のアシスタントをしているジェシーはそんな男性との出会いを求めていた。今日も家に帰ると、登録したデートサービス会社から紹介状が来ている。手紙を手に家に入ろうとしたとき、隣に引越してきたらしいとびきりハンサムな男性を見かけ、ジェシーの胸はときめいた。だが、彼の目はジェシーの持っている手紙に注がれていた…。
ペットショップに勤めるシャーリーの楽しみは、新聞の恋愛相談を読むこと。その回答者ミスター・ハートは、センス抜群で、繊細な感性の持ち主だった。ある日、ブレットという男が店にやってきてチンパンジーを預かってほしいと言う。彼のブルーの瞳に魅せられたシャーリーは、この恋の行方をミスター・ハートに相談した。
深夜、部屋に忍び込んでくる男の影にサラは身を硬くした。ここはニューヨーク-。どんなことが起こってもおかしくない街。でも、引っ越し早々に、いったい何者が?しかし、じっとしているわけにはいかない。サラはテニスラケットを手にすると侵入者に向かって思い切り振り下ろした。
ハリウッド、ビバリーヒルズ。豪邸住まいの淑母に留守番役を言い渡されスザンナは浮かれ気分だ。憧れのロールスロイスで、海岸へドライブに出かけた。ところが、途中で道に迷い、あげくの果てに車が故障。困ったスザンナは、近くのビーチハウスへ助けを求めた。ドアを開けたのは、黒みがかった鋭い瞳の男。男は故障を直し、窮地を救ってくれた。しかし、スザンナは、彼の質素な服装から、失業中と思い、同情する。数日後、再びスザンナの前にビーチの男が現れた。その時まで、彼があの有名なデザイナーC・J・ヤングだとは思いもしなかった。
吹雪のボストン。イメージ・コンサルタントのジルは、ようやくタクシーに乗れ、ほっとしていた。だが、渋滞の中、ジルと運転手のルークは、何げない言葉のやりとりから、険悪になっていた。やっと目的地に着き、代金を払おうとすると財布がない。困るジルにルークは、同窓会に出席する僕のためにイメージチェンジをしてくれないかと、提案した。もしだめなら、無銭乗車で警察に突き出すという。どうしよう…。ジルは仕方なく提案に従い、再会を約束するのだった。
ケイトはニックとの共著でミステリーを書くことになった。そんな折、ケイトは亡くなった叔父からヴィクトリア調の屋敷を相続することになった。しかし相続のためには、シカゴ郊外のその屋敷に6カ月間住まなければならなかった。仕事を失いたくないケイトはニックと一緒に住むことを企てる。だが仕事のためとはいえ、知り合って間もない男と暮らすのは危険すぎる。しかも、ニックはあまりにセクシーすぎるのだった。
オスカー伯爵の従兄弟と名乗るジャーヴィス。実は彼は、伯爵の財産や爵位をねらっているらしい。伯爵に呪いをかける秘密の儀式を偶然見かけ、ドリナの胸は締めつけられた。ジャーヴィスの策略によって愛する伯爵を見殺しにすることはできない。「愛は奇跡を起こすの」と言った亡き母の声に勇気を得て、ドリナは伯爵のもとに急いだ。
父母を失い、頼る人もいないドルーシラは今は住み込みの家庭教師として公爵家で働く身。そんなある夜、ドルーシラの部屋に、今は候爵となっている幼なじみのヴァルドが飛び込んできた。「きみだけが、ぼくを助けることができるんだ」思いがけない再会に驚くまもなく、雇い主の公爵が現れ、公爵夫人とヴァルドとの仲を疑い、決闘を申し込もうとする。ヴァルドをかばうためにドルーシラは思わず、彼から求愛され、結婚するつもりだと告げる。
田舎とは聞いていたけれどこれほどとは!夜道はレスリーの心をうつすかのように暗く淋しかった。息子の親権を確保するための便宜上の結婚。しかも相手は手紙のみで一度も会ったことのない男。これから行くオクラホマの牧場ではいったいどんな生活が待っているのだろう。ああ、もし…。