著者 : 黒木渚
高校二年のシッポは、中学からの片思いの男子に接近するため軽音部に入る。好きな音楽はパンク、好きなバンドはクラッシュ、ダムド、ニルヴァーナ…。でもこれ、ぜんぶ嘘。すべては愛する彼のため、だった。ところが彼に近づくために用意した「設定」は、少しずつ彼女の中にあった「音楽の光」をとらえて、追い越していく。青春はエゴイスティックで汚くて、生々しい。それでも眩しい一瞬の光だ。あの光はスポットライトか、それとも恋か。
孤独と怒りを抱えた少女が、崩壊寸前の家族を捨て、全寮制の中学校へ行くのは圧倒的なひらめきだった。家を出て行った父と、それを受け止めた母、静かに悲しむ弟。四人家族の輪から最初に抜けたのは、私。それでも私は「父親」という存在にいつまでも囚われている。孤高のミュージシャン、そして小説家。魂の最新長編書き下ろし。
乳酸菌飲料を配達するラクトママたちが見つけた、ちいさな奇跡とたしかな幸せ。配るのはラクトルだけじゃない、集めるのは代金だけじゃない…かもしれない甘くてほろ苦い4つの物語。甘くてほろ苦い連作短編集。
神崎あたり。おめでたい名前だが、現実のあたりの人生は混沌としていて、ハズレ感で満ちあふれている。勤め先の役場では、町の住民からのクレームと、お局からの嫌がらせの嵐。何かを変えたくて、好意を寄せてくれた先輩と一夜を過ごしてもみた。でも状況は悪くなるばかり。もうだめだーそう思った彼女の前に現れたのは、得体の知れない物体を作り続ける松本という名前のおじさんだった。行き場のなくなったあたりは、おじさんの家に転がり込み、奇妙な共同生活が始まる。
女子高の寄宿舎に暮らす少女タイラ。鬱陶しい同級生たちから逃れられる唯一の場所「書斎」にこもる彼女に、ある夜、“壁の鹿”から声が聞こえる。結婚詐欺師、恋に悩む女、剥製職人…彼らの「孤独」に交感する声とは。絶望と希望を鮮やかに描く、黒木渚の魂の叫び。衝撃の処女小説刊行。