著者 : W・G・ゼーバルト
土星の環[新装版]土星の環[新装版]
何世紀もの破壊の爪痕をめぐる イギリス南東のサフォーク州の海岸線や内陸にひっそりとある町々をめぐる徒歩の旅。荒涼とした風景に思索がよびさまされ、過去の事跡からつぎつぎに連想の糸がたぐられていく。アフリカから戻ったコンラッドが寄港した保養地、中国皇帝が乗るはずだった列車が走行していた鉄橋……そして本書の同伴者となる17世紀の医師、トマス・ブラウンをはじめとした、魂の近親者である古今の人々との出会い。 〈私〉という旅人は、どこか別世界からやってきた人のように、破片を拾い上げ、想起によって忘れ去られた廃墟の姿を甦らせる。人間の営みを、人間によって引き起こされる破壊と惨禍を、その存在の移ろいやすさとともに見つめようとする眼。歴史を見つめるその眼差しは、そこに巻き込まれた個々の人間の生、その苦痛に注がれている。 「作中入れ替わり立ち替わり現われる奇妙なエピソードは、それぞれ独自の奇怪さを有していて、印象としては、すべてが次第にひとつに収斂していくのではなく、何もかもがいつまでも横滑りしていく感がある。」柴田元幸氏による解説「この世にとうとう慣れることができなかった人たちのための」より引用。
目眩まし[新装版]目眩まし[新装版]
時を超えて重なり合うどの旅のどこにも、永遠の漂泊者「狩人グラフス」が影を落とす。カフカと同じ旅をした語り手の“私”は、死と暴力の予感におののいて、ヴェローナから逃げ帰る…。さまざまなものや人が響き合い、時間と場所を越えて行き来する。
アウステルリッツ(新装版)アウステルリッツ(新装版)
ウェールズの建築史家のアウステルリッツは、帝国主義の遺物の駅舎、裁判所、要塞都市、病院、監獄を見て回り、語り手の“私”に向かって驚くべき博識を開陳し、暴力と権力の歴史を語る。
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