花火・来訪者 他十一篇
大逆事件と時代への批判,諦観の想いを述べた「花火」,反時代性の果てにあるエロスをテーマとした「夏すがた」,爛熟した江戸情調への追慕を綴った戦前の小説,随筆を精選した.「来訪者」は,戦中に執筆され,終戦直後,発表の実験小説,鶴屋南北の「四谷怪談」を連想させる,男女の交情を凄愴の趣を込めた描いた問題作.(解説=多田蔵人)
花 火
曇 天
怠 倦
銀座界隈
花より雨に
蟲 干
初 硯
*
夏すがた
にくまれぐち
あぢさゐ
女中のはなし
来訪者
夢
解 説ーー永井荷風・沈黙の論理……………多田蔵人