出版社 : 岩波書店
堀トシヲ十九歳。東京モスリン亀戸工場女工。百年前に誕生した細井和喜蔵渾身の名著『女工哀史』の裏には共作者ともいうべき人がいた。妻トシヲである。貧しさから身を起こし各地の紡績工場を経めぐり、関東大震災、西宮大空襲を潜り抜け、そしてーー。戦前から戦後を貫く類まれな半生を描く評伝小説。加藤陽子氏、磯田道史氏推薦! 第一章 十歳から二十歳 大正二年(一九一三)-大正十二年(一九二三) 出会い それぞれの紡績工場 はじめての東京 ベストセラーに見た世界 ふたり暮らしがはじまって 関東大震災の襲来 九月一日の夜 九月一日の深夜から二日 九月二日の夕刻から三日 九月四日の亀戸警察署 九月五日から七日 第二章 二十歳から四十三歳 大正十二年(一九二三)-昭和二十一年(一九四六) 故郷へ逃れて 疑われた「一〇〇円」 再び東京亀戸へ 下目黒への転居 永訣の日 捨て鉢 争議と邂逅 スキャンダルからの逃走 賀川豊彦夫妻のもとで 弾圧強化と非常時日本 西宮大空襲 戦争に敗けて 第三章 四十三歳から七十歳 昭和二十一年(一九四六)-昭和四十八年(一九七三) 闇屋稼業 狙われた闇煙草 ニコヨン暮らし 労組立ち上げ 組合潰し 健康保険証が欲しい 日雇い母の会 和喜蔵の故郷へ 思い出してくれるなら 主要参考文献 謝辞
恋愛・立身出世など先進的なテーマを扱う菊亭香水『世路日記』、撥鬢小説の名を生んだ村上浪六『三日月』、東京の貧民生活を記録した松原岩五郎『最暗黒の東京』、平家物語に取材した高山樗牛『滝口入道』を収録。
新時代にふさわしい毒を備えて世態を活写した作品群を精選する。饗庭篁村『当世商人気質』、斎藤緑雨『かくれんぼ』 『あま蛙』『小説評註問答』 『眼前口頭』、内田魯庵『文学者となる法』、ほかを収録。
『失われた時を求めて』は幾重もの謎に包まれている。──長篇はいかに誕生したのか? 対比されているのはスワン家とゲルマント家なのか? ヒロイン・アルベルチーヌはなぜ捉えどころがないのか? 「私」という一人称の仕掛けとは?──小説と批評を総合した希有なる作品の隠された構造を、草稿研究の先駆者が精緻に読み解く。 まえがき 第一部 大長篇誕生の謎 第一章 まぼろしの初稿の発見──「七十五枚の草稿」を読む 第二章 小説と批評の総合──『サント=ブーヴに反論する』の未完の構想 第三章 増殖する長篇──終わりなき加筆をたどる コラム1 レオニ叔母の「椎骨」──ジッドによる出版拒否 第二部 作品の構造をめぐる謎 第四章 社交界に君臨する人びと──貴族・ブルジョワ・ユダヤ人 第五章 ジュヌヴィエーヴ・ド・ブラバンの幻灯──コンブレーとゲルマントをつなぐ伝説 第六章 画家ベノッツォ・ゴッツォリ──「コンブレー」から『囚われの女』への四極構造 コラム2 フロイトの時代──スワンの「夢」を分析する 第三部 芸術と芸術家をめぐる謎 第七章 キク、乃木将軍、浮世絵、水中花──ジャポニスムへのまなざし 第八章 ギリシャの彫刻とエジプトのミイラ──偶像崇拝と分身について 第九章 作中の芸術家たち──エルスチールを中心に コラム3 厳寒のパリにプルーストとモローを訪ねる 第四部 恋心と性愛をめぐる謎 第十章 情熱と冷静──恋心を語る自由間接話法 第十一章 ジッドとプルーストの対話──『コリドン』から『ソドムとゴモラ』へ 第十二章 「サディストは悪の芸術家である」──ヴァントゥイユ嬢の純粋さ コラム4 ニジンスキーの跳躍──作家の見たバレエ・リュス 第五部 作家の方法をめぐる謎 第十三章 パリの物売りの声──フィクションか批評か 第十四章 ゴンクール兄弟の「未発表の日記」──文体模写とフェティシズム 第十五章 第一次大戦下のパリ──反リアリズムの方法 コラム5 プルーストの墓(二〇二二) 終 章 深まる謎コラム 『失われた時を求めて』の梗概 初出一覧 あとがき 注 参考文献一覧 図版出典一覧 人名索引
尾崎紅葉を中心に集い、雑誌『我楽多文庫』を主な拠点として文壇に一大勢力をなした硯友社。山田美妙『蝴蝶』、巖谷小波『妹背貝』、広津柳浪『黒蜥蜴』、川上眉山『うらおもて』、江見水陰『女房殺し』などを収録。
観念的な理想郷を詩情豊かに描き出すことを追求した二人の代表作を収める。独歩の死後刊行された手記『欺かざるの記』(抄)ほか『源叔父』『武蔵野』、都会と故郷の間に揺れ動く近代的感性を描いた湖処子の『帰省』を収録。
小説の改良を高らかに宣言した坪内逍遥。言文一致体をあみ出した二葉亭四迷。明治文学に重要な転回をもたらした二人に焦点をあてた作品集。逍遥の「細君」「春風情話」、二葉亭の「浮雲」ほか全四篇を収録。
「おれはもうおじさんではなく、おじいさんだ」--様々な思いをおきざりにして生きてきた長坂誠、65歳。その運命の歯車が或る姉弟との出会いから動き出す。おきざりにされた者など、いない。生きていくかぎり、ささやかでも希望が生まれ、その旅は続いてゆくから。吉田拓郎の名曲にのせて贈る、昭和の香り漂う令和の物語。
繊細複雑な文章と、その長さで文学史にそびえ立つ『失われた時を求めて』。岩波文庫版を全訳した編者が、生と死/愛と性/認識と忘却など、八つのテーマで選び抜いた断章は、あらすじを知らずとも、どの頁からでも気軽に楽しめる。人間と社会の深層をえぐる箴言と散文詩のような珠玉の文章には、世界の見方を一新する言葉が煌めく。 はじめに 『失われた時を求めて』の全巻構成/主な登場人物/主な架空地名 1 生と死 人生とは 眠り 病気と医学 老いと死 来世 2 家族と友人 親子と夫婦 人間の長所と短所 友情 噓 3 愛と性 恋の発端 乙女たちへの憧れ 恋するとは 恋の対象 性愛 嫉妬 愛の喪失と忘却 同性愛(ソドムとゴモラ) 4 社交界・戦争・先端技術 社会・社交界 政治・外交 戦争 電話・写真・乗り物 5 花鳥風月 天気と自然 さまざまな花 鳥 6 音・匂い・名 物音 匂い 美食の愉しみ 名と夢想 教会 7 認識と忘却 知覚とイメージ 夢 確信・想いこみ 記憶 忘却 よみがえる過去 無数の自我 時間 空間 8 文学と芸術 教養 文学と作家 芸術と芸術家 読者 批評 おわりに 図版一覧
「この車に乗ったら最後、お前の身体は、一から十まで作り変えられる」。師に見出され殺しの道を歩みはじめた彼女は、死と隣り合わせの最終訓練に臨む。人を破壊する術を身につけることは、人として、女としての「普通」の一生を粉々にすること──。伝説の殺し屋誕生を濃密に描き出す、戦慄と陶酔ほとばしる『破果』外伝。 破 砕 作家のことば ク・ビョンモ インタビューーー「小説は文章の芸術です」 解説……………深緑野分
明治維新以後も伝統的教養の表現形式であった漢詩文。新時代の啓蒙思想家・中村敬宇、磊落な気性の信夫恕軒、悲恋の詩を残して早世した中野逍遙、繊細華麗な詩風の森春濤、ジャーナリスト成島柳北の漢詩や散文を収録。
女戸主として生活の糧を得るための苦闘のなかで鬱屈した思いを小説に託した一葉。「大つごもり」「たけくらべ」「にごりえ」など16篇の小説と半井桃水・川上眉山・斎藤緑雨らとの交流が描かれる「日記」を抄出で収録。
謎のウィルスにより人類はほぼ絶滅した。生き残ったのはトビーやゼブら一握りの人々と、人造人間クレイカー、そして残忍な凶悪犯たち。ゼブは荒廃した街で兄アダムの手がかりを探す。世界を破滅させたウィルスの正体は何だったのか──時間はゼブが若き天才クレイクに出逢った日に遡る。壮大な物語はクライマックスへ。 マッドアダム三部作 これまでの物語 〈卵〉 〈卵〉の物語、オリクスとクレイクの物語と、二人が人や動物をどう作ったかの物語。カオスの物語。スノーマン・ザ・ジミーの物語。いやなにおいがする骨の物語と、悪人二人が出てきた物語 ロープ ロープ 行 列 ケ シ 土壁ハウス 朝 朝 食 ハンモック 物 語 帰 還 ベアリフト ゼブが山で迷い、クマを食べた物語 ファートレード 墜 落 食 料 おんぼろ小屋 ビッグフット ゼブと“ありがとう”と“おやすみなさい”の物語 傷 傷 バイオレット・バイオトイレ まばたき ゼブの闇 ゼブの闇 ゼブ誕生の物語 石油教会の子どもたち スキリッツィの技 ミュートとセフト ヘーミン地の奥深く 目覚めるスノーマン 花柄のベッドシーツ 女の子用品 目覚めるスノーマン ドラッグストアのロマンス 草むしり ブラックライトのヘッドランプ ゼブとファックの物語 〈浮き世〉地区 ザ・ハッカリー 冷めた料理 ブラックライトのヘッドランプ 腸内パラサイト・ゲーム
過ぎし日、父親レヴの虐待を逃れて家を出たゼブ。しかし潜伏先でレヴに遭遇したゼブは…。運命はクレイクと謎のウィルスへと繋がっていく。一方、凶悪犯と闘うため、トビーたちは昨日の敵と手を結ぶことに。すべてが終わった後に開ける未来とは? 科学技術と環境破壊が行きつく先を構想した近未来小説三部作、ここに完結! 骨の洞窟 筆記体 ハチの群れ 骨の洞窟 子ブタたち ベクター クレイク誕生の物語 少年クレイク グロブ・アタック ベクター ウロコとシッポ ゼブとヘビ女たちの物語 子ブタ 預言者 子ブタ 長いおしゃべり 退 避 アヌーユー砦 クライオジーニアス行きの列車 二つの卵とクレイクが考えたことの物語 サングラス キックテイル ラズベリームース クライオジーニアス行きの列車 ルミローズ エデンクリフ 卵の殻 招 集 出 撃 卵の殻 戦いの物語 月の暦 裁 判 儀 礼 月の暦 本 本 トビーの物語 謝辞 訳者あとがき