出版社 : 岩波書店
南北戦争による社会の分断と、激動の戦後。価値観が大きく揺らいだ時代に、現実に立ち向かって生きのびていくスカーレット・オハラの強さはどこから来るのか。移民史、黒人史、先住民史や南北戦争史を紐解きながら、作品の今日的な意義を見つめ、通俗小説という理解を打ち破って、壮大なアメリカン・サーガとして読み直す。岩波文庫『風と共に去りぬ』(全6巻)各巻解説に新章を加筆。
『秘密の花園』の主人公はなぜ憎たらしく描かれたのか。『赤毛のアン』の作者モンゴメリは、グリン・ゲイブルスという場所に何を託したのか。児童文学の名作を読み解き、いぬいとみこ、石井桃子、村岡花子、ビアトリクス・ポターら先人たちの仕事の核心に迫っていく。物語の名手による初の児童文学エッセイ集。
岩波少年文庫は1950年のクリスマスの創刊以来、途切れることなく続いてきた。その70年のあゆみを振り返るとともに、代表作と作家の解説、挿絵画家の逸話、翻訳者の仕事にも光をあてた初めての保存版。著名人の文章も多数再録。創刊から現在までの総目録付き。
あなたの書いたものは、良い小説ですか、悪い小説ですか。小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。終わりの見えない軟禁の悪夢。「更生」との孤独な闘いの行く末はー。
「いちばん大きなカタストロフは、しばしば小さな足音で近づいてくる」第二次大戦前夜、オーストリア併合に至る舞台裏を、歴史の断片から描き出す。大企業家とナチ高官との秘密会合、オーストリア首相を恫喝するヒトラー、チェンバレンを煙に巻くリッベントロープ…。彼らの卑小で時に荒唐無稽な行動・決断が、世界を破局に引き込んでゆく。仏ゴンクール賞(二〇一七年)受賞作。
「豚になってでも生きろ」-李芳根の助けで日本に逃れた南承之。済州島に残った芳根が自殺した日の夜、承之と芳根の実妹で東京に住む有媛は同時に芳根の夢を見る。二つに割れてそれぞれの心の中に生きる芳根の魂が二人を引き寄せていく。名作『火山島』の続々編にあたる本作は、金石範文学の原点であり、巨大な小説の終わりでもある。
高度経済成長の栄光を謳歌したアパレル産業はなぜその輝きを失ったのか!?焼け跡からの勃興、群雄割拠の戦国時代からユニクロやZOZOまで、日本経済の栄枯盛衰とともに描く一大産業絵巻!
マトー率いる傭兵の反乱はカルタゴを苦しめる。長引く戦闘、略奪、飢餓。女神の聖衣を奪われ国を窮地に陥らせたサラムボーへの糾弾の声は高まり、ついに獰猛なモロック神への子供たちの供犠が始まる。激情と官能と宿命が導く、古代オリエントの緋色の世界。
メキシコ革命の動乱を生き抜き、経済界の大立者に成り上がった男アルテミオ・クルスの生涯と、かれが生きた疾風怒涛の時代の風景を、内的独白、フラッシュバック、時制と人称の巧みな混用など、様々な文学的手法を駆使して描く、ラテンアメリカ文学の最重要作。
ゲルマント大公邸のパーティーに赴いた「私」は驚愕した。時は、人びとの外見を変え、記憶を風化させ、社交界の勢力図を一新していたのだ。老いを痛感する「私」の前に、サン=ルーの娘はあたかも歳月の結晶のように現れ、いまこそ「作品」に取りかかるときだと迫る。
ミヒャエル・エンデが、父エトガーに捧げた代表作を、生誕90年記念版として新訳にて刊行。謎めいた幻想譚30篇と、父エトガーによる不思議な魅力に満ちた絵画は、書物のなかで、終わりのない響き合いを続けている。