道草
留学帰りの健三は仕事に忙殺され、妻子を思いやる余裕もなく日々を過ごしていた。ある日、彼のもとへ絶縁したはずの養父・島田が金の無心にやって来る。かつての恩義や見栄のため、頼みを断れない彼に嫌気がさす身重の妻。しかし意固地な二人は話し合うこともせず、すれ違う。腹違いの姉からも経済的支援をせがまれ、健三の苦悩は深まるが…。互いへの理解を諦めきれない夫婦の姿を克明に描く、漱石後期の名作。
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『道草』が『猫』執筆前後の漱石の実生活に取材した自伝小説であるとする見方は定説といってよい。だが、実生活の素材がどういう過程で作品化されているかを追究してゆくと、この作品が私小説系統の文学とは全く質を異にしていることが分かる。 1990/04/16 発売