道草
小雨降るある日、健三は勤め帰りに思いがけない人物を見かける。それはかつての養父・島田で、海外留学から戻り大学教師となった健三から、何がしかの援助を得ようと十数年の時を経て近づいてきたのだ。島田、島田の先妻・お常、姉・お夏、妻・お住の父。困窮する係累にあてにされ、神経症気味の妻とも気持ちがすれ違う。永遠に「片付かない」日常の苦悩を描いた自伝小説ともいえる家族の物語。
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『道草』が『猫』執筆前後の漱石の実生活に取材した自伝小説であるとする見方は定説といってよい。だが、実生活の素材がどういう過程で作品化されているかを追究してゆくと、この作品が私小説系統の文学とは全く質を異にしていることが分かる。 1990/04/16 発売