江戸下町の人情の綾を描く。江戸・深川中島町、俗にいう澪通り。過去を秘めた心やさしい木戸番夫婦の胸を熱くさせる愛し、涙し、許しあう男と女たち。江戸下町のけなげに生きる人びとを描いた連作短篇小説集。
川沿い澪通りの木戸番夫婦は、人に言えない苦労の末に、深川に流れて来たと噂されている。思い通りにならない暮らしに苦しむ人々は、この二人を訪れて知恵を借り、生きる力を取りもどしてゆく。傷つきながらも、まっとうに生きようとつとめる市井の男女を、こまやかに暖かく描く、泉鏡花賞受賞の名作集。 1993/09/15 発売