今は亡き母との思いを遥かな日の記憶に求める表題作をはじめ、父と少年との雄々しくも感動的な絆を、中国連峰の緑のなかに、見事にとらえた名篇「皐月」等、新しい作家の出現を告げる傑作集。
少年と父の感動的な絆を中国連峰の緑の中にみごとに描出した「皐月」や鎌倉の鮨職人の心に鮮やかに亡き母の思い出が浮かび上がる瞬間を捉えた。「三年坂」、失意の中年男が草野球に誘われて思いがけず自分の生き方を見つける「水澄」など、深い抒情性と巧みな文体、人生へのいつくしみに溢れた初の小説集。 1992/08/01 発売