かげろうの日記遺文
原典『蜻蛉日記』ではあまり記されていない町の小路の女・冴野は、学も名もないながら、己のすべてを男に与え消え失せた美しい女であった。室生犀生は『日記』の書き手以上にこの女を愛し、犀星自身の消息を知らぬ生母の身の上に重ねて物語り、限りない女性思慕の小説とした。川端康成をして、“言語表現の妖魔”とまで言わしめた野間文芸賞受賞作。
原典『蜻蛉日記』ではあまり記されていない町の小路の女・冴野は、学も名もないながら、己のすべてを男に与え消え失せた美しい女であった。室生犀生は『日記』の書き手以上にこの女を愛し、犀星自身の消息を知らぬ生母の身の上に重ねて物語り、限りない女性思慕の小説とした。川端康成をして、“言語表現の妖魔”とまで言わしめた野間文芸賞受賞作。