空白を満たしなさい(上)
ある夜、勤務先の会議室で目醒めた土屋徹生は、帰宅後、妻から「あなたは3年前に死んだはず」と告げられる。死因は「自殺」。家族はそのため心に深い傷を負っていた。しかし、息子が生まれ、仕事も順調だった当時、自殺する理由などない徹生は、殺されたのではと疑う。そして浮かび上がる犯人の記憶……。
死者たちが生き返ってくる世界を、息を呑む圧倒的なリアリティで描き出し、現代における「自己」という存在の危機と、「幸福」の意味を追究して、深い感動を呼んだ傑作長編
<内容紹介>
ある夜、勤務先の会議室で目醒めた土屋徹生は、帰宅後、妻から「あなたは3年前に死んだはず」と告げられる。死因は「自殺」。家族はそのため心に深い傷を負っていた。しかし、息子が生まれ、仕事も順調だった当時、自殺する理由などない徹生は、殺されたのではと疑う。そして浮かび上がる犯人の記憶……。
安西は、腕組みして、背もたれに体を預けると、神妙な顔で徹生を見つめた。
「なあ、土屋、--いいか? 人間一人死ねば、その一人分の穴が開く。大きい穴もあれば、小さい穴もある。けど、その穴をいつまでも放っておくわけにはいかんだろう。みんなで一生懸命埋める。じゃないと、一々その穴で躓(つまず)くことになる。--な?」
「……。」
「仕事の穴、家族の穴、遺された人の心の中の穴。--お前は、それがちょうど、塞(ふさ)がったところに戻って来てる。無理に抉(こ)じ開けようとすると、破れてしまうぞ。」
ーー本文より
第一章 生き返った男
第二章 人殺しの影
第三章 惑乱の渦中へ
第四章 過去が明るみに
第五章 茫然自失
第六章 決定的な証拠
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世界各地で、死んだ人間がよみがえる「復生者」のニュースが報じられていた。生き返った彼らを、家族は、職場は、受け入れるのか。土屋徹生は36歳。3年前に自殺したサラリーマン、復生者の一人だ。自分は、なぜ死んだのか?自らの死の理由を追い求める中で、彼は人が生きる意味、死んでいく意味を知るー。私たちは、ひとりでは決してない。新たな死生観を描いて感動を呼ぶ傑作長編小説。 2012/11/27 発売
全国で生き返る「復生者」たち。その集会に参加した徹生は、自らの死についての衝撃的な真相を知る。すべての謎が解き明かされ、ようやく家族に訪れた幸福。しかし、彼にはやり残したことがあった……。生と死の狭間で「自分とは何か?」という根源的な問いを追究し、「分人」という思想が結実する感動長編。 妻に「あなたは自殺したの」と告げられた会社員の心の軌跡をたどる旅は、「あの時、何が起きたのか?」という謎の核心へと迫っていく。現代人の孤独を超克する希望の物語。「分人」という思想の到達点! <内容紹介> 全国で生き返る「復生者」たち。その集会に参加した徹生は、自らの死についての衝撃的な真相を知る。すべての謎が解き明かされ、ようやく家族に訪れた幸福。しかし、彼にはやり残したことがあった……。生と死の狭間で「自分とは何か?」という根源的な問いを追究し、「分人」という思想が結実する感動長編。 読者から大反響の話題作! 深い感動の声が続々! 「満たされ、渦巻き、今溢れ出している」 「心が救われた」 「涙が止まりません」 「目からうろこ」 「この本に出逢えて良かった」 「本を読んで初めて泣いた」 第七章 楽園追放 第八章 勝者なき戦い 第九章 真相 第十章 夢のような一時 第十一章 空白を満たしなさい 2015/11/13 発売