「僕たちが外国から受け入れたものは、矛盾をうんでいる。その皺よせは家の中へ来るさ」妻の情事と病。子供たちの離反。夫は崩れゆく家庭をつなぎ止めようと、進行する悲劇とは裏腹に喜劇を演じ続ける。鬼才の文名を決定づけた、戦後文学の金字塔。
妻の情事をきっかけに、家庭の崩壊は始まった。たて直しを計る健気な夫は、なす術もなく悲喜劇を繰り返し、次第に自己を喪失する。不気味に音もなく解けて行く家庭の絆。現実に潜む危うさの暗示。時代を超え現代に迫る問題作、「抱擁家族」とは何か。<谷崎潤一郎賞受賞作品> 1988/02/01 発売