ほんのこども
ころす側の論理、ころされる側の論理。元同級生あべくんからのメールにあった文章から着想したシーンをつないで、商業作家はあべくん自身の人生を小説にしようとする。父による母殺傷事件、両親がころしころされていたあべくん…。暴力で愛撫し合い痛みをこらえるようによろこぶ身体たち。物語にかえろうとするから人生はつらく、日常が重すぎてひとをころしたくなる。恋人をころして自分も死んだところで折り返し、物語は無限に再生を繰り返す。小説家があべくんなのかあべくんがかれなのか、やがてふたりの境界は曖昧になり、問い自体が意味を失う。