うつせみ
「もし自分に飽きたなら、いくらでも取り替えてしまえばいいのよ」。美容整形をくり返すばあちゃんは言うけれど、私は、なりたい自分がわからない。見られることの痛みを描く、紗倉まなの最新小説!
周囲に馴染めずバイト先をクビになり、グラビアアイドルの仕事を始めた辰子。
売れっ子の仕事仲間はSNSの評価に神経をとがらせ、79歳のばあちゃんは傷跡を重ねながら整形をくり返す。
ゴールの見えない「美しさ」に追われ、ままならない体と生きづらさを抱える彼女たちは……。
野間文芸新人賞候補となった『春、死なん』に続く、新境地注目作。
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洒脱にして剣呑、静謐にして囂囂たる、“僕”と“おじさん”と“おじいさん”の夢幻の如き日々は、どこに辿り着くのか。 ランボー、アルトー、ジュネ、ヴィアンの翻訳者が満を持して放つ、破格の書き下ろし長編小説! 僕の家にはおじいさんとおじさんがいて、僕がお世話になっているところや知り合いのお店なんかにとつぜん出没しては、わざと迷惑をかけたりして僕に恥をかかせるのだが、どこかに忠実な間諜がいて、そいつが連絡でもしているみたいに絶妙のタイミングで現れるので、よけいに腹が立って仕方がない。あっちは二人だから、いつもこちらは多勢に無勢みたいな気がするし、彼らはむやみに嵩高いのだ。いつか手押しリヤカーに二人を乗せて夜のメリケン波止場から暗い海に突き落としてやろうと思っている。(…)確かなことは、僕がいつまでたっても三人のなかで一番年下だということだし、何を隠そう、この劣等感をぬぐうことができず、自分でも情けなくなることがある。子供の頃から、僕はできるだけ早く歳をとりたかった。さすがにいきなり皺だらけのじじいになるのは嫌だったけれど、いつまでたっても子供モドキでいることに耐えられなかった。(本書より) 第一章 日誌 第二章 廃址 2020/11/30 発売