ホワイトルーキーズ 6
風見司が初期臨床研修を終えてから、三年が経過していた。彼は内科医としてより研鑽を積むべく、「北海道総合病院」で新生活を始めていた。風見は研修医を指導する立場になっており、同院の研修医の指導を任されたのだが、患者への治療と安全を優先して、いったん指導を中止したことから不和が生じてしまう。折しも、風見はかつての同期である清水涼子に院内で出くわす。彼女は膠原病内科医として順風満帆な生活を送っており、医師として大きく成長していた。研修医時代に結婚した朝倉雄介と詩織は順調な新婚生活を送っていたが、転勤を繰り返すたびに気持ちがすれ違うようになっていた。医師として社会での役割を果たす責任と、結婚生活の維持との板挟みになってしまう。四人の立場は変わり、それぞれが家庭と仕事の折り合いをつけながら、また新たな命を育みながら、医師としての未来を選んでいく。広大な北海道の大地を踏みしめて。
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北海道の片田舎にある空知総合病院に四人の研修医が赴任してきた。風見司は工学部の大学院を修了後、医学部に編入した経歴の持ち主であり、病院という環境に慣れずにいた。初日から心肺停止の患者に出くわすなど、医療現場の厳しさに打ちのめされる。沢井詩織は都内私立大学の医学部を卒業後、実家の医院があるこの地方に戻ってきたが、医師になってから見える景色は違っていた……。朝倉雄介は貧しい母子家庭に生まれ、生活苦の中で医師を目指したが、思い描いていた生活とのギャップにうんざりしていた。清水涼子はかつて祖父母の主治医であったベテラン医師と出会うが、患者の家族として見えた姿と、同じ病院で働く医師として見る今の姿は違っていた。新米研修医の同期四人は失敗と成長、喜びを分かち合いながら院内を奔走する。二年後に医師として独り立ちすることを夢見て、空知の青空に希望を乗せて……。 2022/02/02 発売
北海道の『空知総合病院』で働く研修医四人は、研修開始から三か月がたち、本格的な夏を迎えようとしていた。少しずつ医療現場に慣れつつある彼らであったが、新たな科に配属になるや否や、超緊急帝王切開が必要な妊婦が救急搬送されてくる。母子に命の危機が迫る中、産婦人科医や小児科医たちが必死で母子を救おうとするのに対し、研修医の清水涼子はなすすべもなく立ち尽くすばかり。彼女はなにもできない無力さを痛感し、病院という場所で働く重責を再認識する。小児科に配属された風見司もまた、初日から厳しい出産に立ち会って自分の未熟さに打ちひしがれていた。末っ子の彼は子供にどう対応していいのかわからず、四苦八苦していたが、次第に診察を通して子供に向き合っていく。朝倉雄介は高齢者医療に携わる中、祖母と暮らしていた頃を思い出し、貧しかった昔と、医師として歩み始めた今の自分を見つめ直していた。そんな折、高齢の女性患者の脱走に出くわしてしまう。彼女が向かった場所はー。沢井詩織は人付き合いが苦手ながらも、近頃は患者との対話にも慣れつつあった。しかし一人で患者を回診していたある日、思わぬトラブルに巻き込まれてしまう。そして夏の終わりに北海道でも新型コロナウイルス感染症が流行し、ついに空知総合病院でも感染者が確認された。四人もコロナ禍で働く現実を実感せずにはいられなかった。 2022/05/23 発売
空知総合病院の研修医四人は赴任から半年がたち、慌ただしい研修生活は日常となっていた。朝倉雄介は慣れた様子で救急外来をこなしていたが、ある日、交通事故の重症患者が予期せぬ形で運ばれてくる。現場は混乱しており、連絡がうまくいかずにどう対応すべきだったのかと悩む。風見司は放射線科を回っている間、知識と技術を磨くことが要求されていた。プロとして自分に足りないこと、そして自分に合った医師としての生き方について考え始める。沢井詩織は緩和ケア科で自分にできることを探していた。治療を拒否する患者が診察室に入ってきて、沢井は患者の考えに納得ができなかったが……。清水涼子はリハビリテーション科で、パーキンソン病患者と出会ったのをきっかけに医師として患者の疾患を診るだけでなく、個人との向き合い方を考えていく。なにもかも手探りの中、四人の将来像は少しずつ形になっていく。空知の大地をともに歩みながら。 2022/12/28 発売
北海道の空知総合病院の研修医たちは2年間の研修医生活も終盤を迎え、進路を決めるべき時が迫っていた。沢井詩織は自分がやりたいことが見つからずにいた。自分の医学に対する自分の熱意が目指す場所を求める感情と、穏やかな私生活を続けたい気持ちの狭間で揺れ動く。朝倉雄介もまた、沢井との生活を続けるための将来を考えていた。風見司は仕事にも慣れ、充実した多忙な毎日を送っていた。だが、ある日、担当患者から「どうせ、先生もすぐいなくなるんだろ?」と言われてしまう。清水涼子は高度な医療を行う大学病院と、大学とは対照的に終の棲家となる穏やかな療養型病院を巡っていた。いずれも必要な仕事だと理解しつつも、その中で自分の医学に対する興味がどこにあるのか、考え直していた。四人はそれぞれの思いを胸に、医師として、個人としての進路を選んでいく。空知の心地よい春風とともに。 2023/10/31 発売