事件は終わった
突然、男は刃物を振り回し、妊婦を切りつけ、助けに入った老人を刺殺した。年の瀬に起きた“地下鉄S線内無差別殺傷事件”。時は過ぎ、それぞれに日常が戻ってくるはずだった。『このミス』大賞&日本推理作家協会賞受賞作家が贈る、事件が終わって始まった、少し不思議でかなり切ない“その後”。会社員の和宏は、一目散に逃げ出したことをSNSで非難されて以来、日々正体不明の音に悩まされ始め…(「音」)。切りつけられた妊婦の千穂は、幸いにも軽傷で済んだが、急に「霊が見える」と言い出して…(「水の香」)。事件発生直前の行動を後悔する女子高生・響が、新たな一歩を踏み出すために決心したこととは(「扉」)。人生に諦念を抱える老人が、暴れる犯人から妊婦を守ろうとした本当の理由とは(「壁の男」)。など、全6編。