貝がらと海の音
郊外に居を構え、孫の成長を喜び、子供達一家と共に四季折々の暦を楽しむ。友人の娘が出演する芝居に出かけ、買い物帰りの隣人に声をかけるー。家族がはらむ脆さ、危うさを見据えることから文学の世界に入った著者は、一家の暖かな日々の移りゆく情景を描くことを生涯の仕事と思い定め、金婚式を迎える夫婦の暮らしを日録風に、平易に綴っていく。しみじみとした共感を呼ぶ長編。
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「貝がらを耳に当てると、海の音が聞えるの」「よく知ってるね。こんちゃんも子供のころ、貝がらを耳に当てて海の音を聞いたよ」孫娘と妻との話し声が流れてくる。もうすぐ結婚50年の年がめぐってくる…。穏やかな眼差で描くかけがえのない日々。 1996/04/20 発売