宣告
「あす、きみとお別れしなければならなくなりました」死刑囚楠本他家雄は、四十歳の誕生日を目前にしたある朝、所長から刑の執行宣告を受ける。最後の夜、彼は祈り、母と恋人へ手紙を書く。死を受容する平安を得て、彼は翌朝、刑場に立つ…。想像を絶する死刑囚の心理と生活を描き、死に直面した人間はいかに生きるか、人間は結局何によって生きるのかを問いかける。
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宣告(上)宣告(上)
殺人犯を意味する収容番号末尾ゼロの「ゼロ番囚」たちは、拘置所二階の特別頑丈な独居房に収容されている。T大卒の楠本他家雄は、いつくるか分からない“お迎え”に常時怯えていた。ほかに女を崖から突き落とした砂田や一家四人を惨殺した大田なども同様に死者の部屋で怯え暮らしている。他家雄の奇妙な墜落感を丹念に診る若い医官で精神科医の近木のあまりに生々しい接見記録と、生と死の極限で苦悩する死刑確定囚たちの拘禁ノイローゼの実態や日々の会話を克明に描いた、類のない傑作。第11回日本文学大賞受賞作で全三巻。「死刑の意味」を現代に改めて問う“死刑囚たちの赤裸々な実態”。 2019/02/07 発売
宣告(中)宣告(中)
楠本他家雄は良家に生まれ頭脳明晰でT大を卒業したにも拘わらず、無為放蕩な生活をくり返し、新橋にある「トロイメライ」というバーで証券会社の外交員を絞殺する。強盗殺人罪で逮捕され、一審の死刑判決を控訴せず刑は確定。だが他家雄は拘置所に入ってからカトリックに回心し、彼の手記に心を動かされた心理学専攻の女子学生・玉置恵津子と文通を始める。死刑囚として淡々と暮らす折り、連続女性暴行殺人犯の砂田市松の死刑が執行される。じわじわと迫り来る死を待つ恐怖におののく青年の魂の懊悩を描く、全三巻の中巻。死刑執行におののく青年の“苦悩する魂”を克明に描いた傑作。 2019/02/07 発売