暗夜遍歴
実業界、政界に雄飛した父は、女性遍歴を重ねていく。その蔭で、母は歌集を編むことによって自らの心を癒す。青春時代、父に反抗しながら、結局は後を継ぎ、大企業のトップに立つ主人公が、今や、忌み嫌っていた父に似てきたことを覚る。自己の内面に潜む、救いようのない血塗の心奥を吐露した長編小説。
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柴山芳三が事業に失敗して困窮しているとき、管財人として現れ、救いの手を差しのべた小田村大介は、じつは芳三が没落するきっかけを作った人物だった。豪腕の実業家であり、気鋭の政治家でもあった小田村は、あるとき芳三の娘・月子を強引にさらい、自分のものにしてしまう。月子は一男一女をもうけ、愛人として空しい日々を送っていたが、短歌に生きる希望を見いだし、小田村の死後もたくましく生きていこうとするのだったー。作者の父・堤康次郎をモデルとした『父の肖像』と対をなす作品で、歌人でもあった作者の母・青山操とそのきょうだい、そして作者自身と思われる人物が登場する自伝的長編。 2022/03/10 発売