昨日壊れはじめた世界で
「実は、世界は、もう壊れはじめているんだ」幼馴染の翔子と再会した書店店主・大介は、すっかり忘れていた小学校時代の出来事を思い出す。同級生四人と忍び込んだ、町で一番高いマンションの最上階。そこにいた不思議な男は、世界の終わりを予言した。その真意を確かめたくなった大介と翔子は、三十年前の記憶をたどりながら再びマンションを訪れるが、男がマンションから飛び降りたという噂を耳にして…。大人になった俺たちは、世界を、自らを、救うことはできるのか。同級生との再会で呼び覚まされた、三十年前に出会った不思議な男の記憶。「ひび割れた世界」に生きる人々のかすかな希望を力強く描く連作短篇集。